テンプレートは、ポリファーマシーのハイリスク患者を対象に入院時の持参薬を薬剤師が評価するためのもの。テンプレートで示された七つの評価項目のいずれかに該当する場合は、薬剤調整を検討する必要性があると評価し、調整の必要性を考慮すべき薬剤やその理由、具体的な処方調整を薬剤師が医師に提案する。
評価項目としては、[1]服薬困難の訴えや薬剤調整の希望がある[2]高齢者の安全な薬物療法ガイドライン「特に慎重な投与を要する薬剤」が処方されている[3]服薬管理能力が低下している[4]同効薬の重複投与の観点から対象薬剤がある[5]効果や副作用の観点から対象薬剤がある[6]薬物相互作用の観点から対象薬剤がある[7]患者の疾患や肝・腎機能などの観点から対象薬剤がある――の七つが盛り込まれている。
多施設共同研究では、福岡記念病院など県内六つの病院の一般病床に入院した65歳以上の患者のうち、薬剤師が関与した事例を抽出し、減薬実施とテンプレートでの評価の相関を後ろ向きに調査した。
薬剤師が関わった入院患者269人中、減薬した患者は73人。テンプレートで薬剤調整検討の必要ありとされた患者151人の中に、減薬した患者67人(44%)が含まれていた。一方、薬剤調整検討の必要ありとされなかった患者118人中、減薬した患者は6人(5%)だけだった。減薬後の転帰を追跡したところ、悪化した患者は1例もなかった。
今回の研究デザインは後ろ向きの検討であるため、薬剤師が現場で実際にテンプレートを活用したわけではないが、減薬実施とテンプレートでの評価には相関関係が認められ、スクリーニングツールとしての有用性が示された。
協議会委員を務める神村英利氏(福岡大学薬学部教授・同病院薬剤部長)は、「多施設での検証は今回が初めて。このテンプレートは、薬剤調整が必要な患者をスクリーニングするツールとして使えるという実感を得た」としている。
協議会は19年度も引き続き研究を実施する。入院期間が長く薬剤調整に適した環境にある亜急性期病棟や慢性期病棟の患者を対象に、薬剤師が同テンプレートを使って薬剤調整の検討が必要な患者を抽出することで、どれだけ減薬の提案につながるかを検証する計画である。