先天性心疾患や骨格の異常などを伴うヌーナン症候群
東北大学は5月24日、先天性心疾患や骨格の異常などを伴う先天性疾患であるヌーナン症候群の新規原因遺伝子としてRRAS2(アーラスツー)遺伝子変異を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科遺伝医療学分野の新堀哲也准教授、永井康貴大学院生、青木洋子教授、創生応用医学研究センター細胞増殖制御分野の中山啓子教授の研究グループが、米デューク大学、横浜市立大学などと共同で行ったもの。研究成果は「American Journal of Human Genetics」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
ヌーナン症候群・コステロ症候群・cardio-facio-cutaneous(CFC)症候群は、低身長・心疾患・骨格の異常・がん感受性を伴う先天性疾患でお互いに類似している。これらの疾患ではRAS/MAPKシグナル伝達経路の分子の変異が原因となっていることから、現在ではRASopathies(ラソパシーズ)と呼ばれている。しかし、既知の疾患遺伝子をすべて調べても、ヌーナン症候群の約2割の患者では遺伝子変異が見つからず、新たな疾患遺伝子の存在が予測されてきた。
全エクソーム解析によりRRAS2の変異を同定
研究グループは今回、既知の疾患遺伝子に変異が見つからない患者27人について全エクソーム解析(WES)を実施。その結果、ヌーナン症候群患者2人において、分類上RASに近いRRAS2に変異が同定された。一方で、WESを行った未診断の患者1人にRRAS2変異が同定され、臨床症状を振り返ったところヌーナン症候群に合致していることが判明した。
培養細胞の実験で詳しく調べたところ、見つかった遺伝子変異はRAS/MAPK経路を活性化する変異であることが示された。さらに、この遺伝子変異をモデル動物である熱帯魚ゼブラフィッシュに遺伝子変異を導入すると、頭頸部の異常、体長が短くなるなど、ヌーナン症候群患者で見られた症状が再現された。
今回の研究は、「ヌーナン症候群患者の正確な診断率の向上、病態解明ならびに治療法開発への道を切り開くものとして期待される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース