調査は、2017~18年度のAMED研究「薬局・薬剤部の機能を活用した副作用報告の推進に関する研究」(研究代表者・益山氏)の一環で行ったもの。
益山氏は、患者の中には副作用と思われる症状が発現していても、自覚できていなかったり、来局時までに忘れてしまうなどして、薬剤師に「体調の変化」を聞かれても伝えそびれている可能性があると考え、確認シートを活用した副作用検出の可能性について調査した。
確認シートは、山口大学病院薬剤部と宇部薬剤師会が共同で運用していた「副作用シグナル確認シート」を参考に作成。調査は、ハイリスク薬の薬剤管理指導料の算定対象となる医薬品を服用している患者に限定して行った。
まず、薬を飲んで気になる自覚症状があれば相談するよう薬局薬剤師に対応してもらったところ、18件の副作用報告が上がった。その後、「吐き気や嘔吐がある」や「食欲がない」「咳が出る」「鼻や歯茎から出血した」「発熱した」「身体がむくむ」など、32の副作用が疑われる自覚症状を記載した確認シートを用いて、薬剤師が「こんな症状はありませんでしたか」と尋ねるようにしたところ、238件にまで増えた。
益山氏は、「こちらから聞けば増えるとは思っていたが、予想以上だった」とし、確認シートに含まれない副作用の訴えが58件もあったことも驚きとした。
想定していなかった副作用の自覚症状を把握できた要因について、「シートを用いたことにより、薬剤師には自分の症状を気軽に相談してもいいということが認識されたのだろう」と分析。「シートを使っただけで、ほとんど相談がないという負のスパイラルから正のスパイラルに変えられることも分かった」とした。
益山氏は、患者や医療関係者から頼られる存在になるためには、「患者相談を増やし、自覚症状を聞けるような関係を作ることが重要になる」とした上で、「常に患者から相談を受ける立場にいて、対人業務の体制を整えておかないとせっかくの知識や専門性を生かすことができない」と訴えた。
ただ、「一部の薬局しかできない取り組みでは良くない」ともし、「それほど難しくなく、できそうなことを見つけて実施してほしい」と述べた。