厚生労働省は17日、医療用医薬品に関するMRやMSLなどによる広告・宣伝活動について、2018年度に全国の医療機関からモニターとして抽出した施設から報告された違反事例を公表した。64の医薬品で適切性に関する疑義報告があり、違反が疑われる項目は74件で、前年度より7件増加。MRが口頭説明や印刷物を用い、エビデンスのない説明や信頼性の欠けるデータを提供するなど、依然として製薬企業による情報提供の信頼性を損ねる違反項目が増えている実態が明らかになった。
厚労省は、医療用医薬品に関する広告活動監視モニター事業を昨年度の8カ月間で実施。全国から選んだ医療機関の薬剤師、医師などから協力を受け、MRやMSLを通じた広告・宣伝活動、講演会、製薬企業のホームページ等を対象に不適切事例を集めた。
その結果、64の医薬品で適切性に関する疑義報告があり、違反が疑われる項目は74件あった。違反が疑われる項目で最も多かったのは、「エビデンスのない説明を行った」が11件(14.9%)と最も多く、次いで「引用時にデータの抜粋・修正・統合等を行った」9件(12.2%)、「信頼性の欠けるデータを用いた」8件(10.8%)などと続いた。
疑義報告が行われた医薬品に関する情報の入手方法としては、「製薬企業担当者(口頭説明)」が22件(48.9%)で最多となり、次いで「製薬企業担当者(印刷物・提供)」が15件(33.3%)、「製薬企業担当者(データ・持ち帰り)」が6件(13.3%)、「医療関係者向け情報サイト」が5件(11.1%)となった。
疑義報告が疑われた医薬品の種類では、抗癌剤、鎮痛剤、糖尿病治療剤、脂質異常症治療剤の順に多く、先発品、後発品のいずれも含まれていた。
これらの調査結果から、製薬企業のMRが行う製品説明会、医療機関の訪問による情報提供といった「クローズドな場」では、16、17年度と同様に不適切な情報提供が行われていることが明らかになった。不適切事例のうち、同じ医薬品について複数の医療機関から似た報告が寄せられたものもあった。
また、MRの情報提供活動以外では、医療関係者向け情報サイトのプロモーション動画において、伝えるべき情報を伝えていない、正確性に欠ける引用を行うなどの不適切事例が確認されていることも示された。