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HPV関連中咽頭がん、ゲノム・エピゲノム異常の全体像解明に成功、病態解明に大きな進展—東大病院

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2019年05月22日 PM12:45

HPV関連中咽頭がんはゲノム異常<エピゲノム異常

東京大学医学部付属病院は5月17日、)が引き起こす中咽頭がんにおいて、ゲノムにみられる遺伝子異常、エピゲノム異常の全体像を解明し、エピゲノム変化の標的が遺伝子の転写開始点にあることを世界で初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の安藤瑞生講師、齊藤祐毅助教、山岨達也教授らと、米国カリフォルニア大学のJoseph Califano教授らと共同で行われたもの。研究成果は、英国科学誌「Nature Communications」オンライン版にて公開された。


画像はリリースより

HPV関連中咽頭がんは、飲酒や喫煙によって引き起こされる中咽頭がんとは性質が大きく異なる。また、同じウイルスを原因とする子宮頸がんよりも近年の患者数増加が著しく、比較的若年者に生じることから、その制圧が世界的な課題となっている。これまでの研究により、HPV関連中咽頭がんにはがん関連遺伝子変異などのゲノム異常が少ない一方で、DNAメチル化などのエピゲノム異常に富むことが知られている。しかし、エピゲノムの全体像は明らかになっていなかった。そこで研究グループは、HPV関連中咽頭がんのゲノム・エピゲノム異常の全体像解明を試みた。

プロモーター領域よりも転写開始点が重要なことが判明

今回の研究対象は、HPV関連中咽頭がんの腫瘍組織47例、および健常者の中咽頭組織25例。これらにつき、次世代シーケンサーを用いたゲノム・エピゲノムの統合的解析を行った。具体的には遺伝子変異解析、遺伝子発現解析、DNAメチル化解析を実施した。さらに、ヒトの腫瘍組織をマウスに移植して増殖させるPDX(Patient-Derived Xenograft)という技術を用いて、エピゲノム調節機構のひとつであるヒストン修飾も解析した。得られた結果を検証するために、The Cancer Genome Atlas(TCGA)の公開データベースを使用したコンピューター解析を行い、また、細胞株を用いた分子生物学的実験も実施した。

その結果、HPV関連中咽頭がんの腫瘍組織は正常組織とは異なるDNAメチル化状態を示し、従来注目されてきた遺伝子の調節領域である「プロモーター領域」よりも、むしろ「」におけるDNAメチル化状態の変化が遺伝子発現と強く関連していることが判明した。

高メチル化腫瘍群ではMyc経路が活性化

TCGAデータベースを用いた検証実験により、中咽頭がんだけでなく乳がんにおいても、転写開始点におけるDNAメチル化状態の変化がより重要であることが示唆された。また、抑制性のヒストン修飾()が転写開始点においてDNAメチル化と協調的にはたらいている可能性も示された。これらの結果は、発がんにつながるエピゲノム異常の解明において、転写開始点への注目を促す画期的な発見。

続いて、DNAメチル化状態を指標にしてHPV関連中咽頭がん症例を解析した結果、患者の中に高メチル化腫瘍に分類される一群が存在することを同定。高メチル化腫瘍群では、Myc経路という発がん経路の活性化が見られ、この事実は細胞株を用いた分子生物学的実験によって裏付けられた。過去の基礎的研究でMycによるエピゲノムの調節機構が報告されていたが、今回は、実際のHPV関連中咽頭がんにおいて示された初めての報告となる。HPV関連中咽頭がんの病態解明に大きな進展をもたらした今回の成果は、今後の治療の最適化の実現にも役立つものとして期待が寄せられる。

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