自宅のTVで実施できる運転技能向上を目指したアプリ
東北大学は5月20日、自宅のテレビで実施できる運転技能向上トレーニング・アプリを開発し、6週間という短期間で高齢者の自動車運転技能と認知力が向上することを実証したと発表した。この研究は、同大学加齢医学研究所の野内類准教授と川島隆太教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Aging Neuroscience」誌オンライン版で公開された。
画像はリリースより
加齢とともに低下する認知機能は、買い物や車の運転など、高齢者の日常生活を困難にしている要因のひとつ。この低下する認知機能を維持・向上させるトレーニングの開発に多くの関心が寄せられている。 これまでに研究グループは、脳トレゲームや音読・計算トレーニングや処理速度ゲームやサーキット運動トレーニングを実施することで、高齢者の認知機能が向上することを明らかにしてきた。今回の研究では、新たに自宅のテレビで実施できる運転技能の向上を目指したトレーニング・アプリを開発。無作為比較対照試験を用いて効果の検証を行った。
対照アプリ群と比べ、自動車運転技能、認知力、活力気分などが向上
同試験の対象者は、仙台市、塩竃市、栗原市で募集した、精神疾患、脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な、65歳~80歳の高齢者60人(平均72.4歳)。 運転技能向上トレーニング・アプリを実施する「運転技能向上アプリ群」と、その他のゲームを実施する「対照アプリ群」に分けて実施した。運転技能向上トレーニング・アプリのゲームは、できるだけ早く回答することが要求され、さらに、参加者の成績によってゲームの難易度が変化する。一方で、対照アプリ群のゲームは、早く回答する必要はなく、介入期間を通じて難易度は変化しない。 また、対照アプリ群のゲームは、参加者が早く回答しても一定の時間が経過するまで、次のゲームは先に進まない設定となっている。
自宅のテレビに接続したセットトップボックスを用いて、両群ともに6週間(週5回以上1日20分)のゲーム介入を行った。トレーニング介入前後に自動車教習所のコース上での自動車運転技能検査や認知機能検査や感情状態などを聞く心理アンケートを実施し、ゲーム介入による変化を計測した。運転技能検査と認知機能検査と心理アンケートの変化量(介入後の得点から介入前の得点を引いて算出)を用いて、運転技能向上アプリ群と対照群のゲームアプリの効果を検証した。その結果、運転技能向上アプリ群の方が対照アプリ群よりも、自動車運転技能、認知力(処理速度と抑制能力)、活力気分などが向上することが明らかになった。
交通事故減少を目指す取り組みへの応用も
自宅のテレビで実施できる認知トレーニングは高齢者であっても取り組みやすいことから、「今後、高齢者の運転技能の維持・向上のためのツールや、高齢者の交通事故などの減少を目指した取り組みとしての応用が期待される」と、研究グループは述べている。
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