低用量プラバスタチン内服開始前の頸動脈硬化の程度の差異を検証
国立循環器病研究センターは5月16日、国内多施設の共同研究により、日本独自の低用量プラバスタチン(10mg/日)長期投与が、頸動脈硬化の強い脳梗塞既往患者のアテローム血栓性脳梗塞の再発を抑制する可能性を報告したと発表した。この研究は、同センター脳血管内科の和田晋一医師(現:国立病院機構九州医療センター)、古賀政利部長、豊田一則副院長、峰松一夫名誉院長らの研究チームによるもの。研究成果は「Stroke」に掲載されている。
画像はリリースより
プラバスタチン製剤は血中コレステロールを下げる働きがあり、脳卒中の発症予防効果があることが知られている。一方で、再発予防に関する研究は多くないことから、わが国では心原性脳塞栓症以外の脳梗塞を発症した日本人に対する低用量プラバスタチン投与による脳卒中再発予防効果を調べた国内多施設共同無作為割付試験「J-STARS試験」を実施。その付随研究として、頸動脈エコーを用いて低用量プラバスタチン投与による総頸動脈の内膜中膜複合体の肥厚進展抑制効果を確認する「J-STARS Echo研究」を行っている。
今回の研究では、特に低用量プラバスタチン内服開始前の頸動脈硬化の程度による再発抑制効果の差異を検証した。
頸動脈硬化の進展でアテローム血栓性脳梗塞の再発率が高く
研究グループは、無作為に割り付けたプラバスタチン群(388名)と対照群(405名)を、事後解析で登録時の頸動脈エコー検査結果から内膜中膜複合体厚(IMT)が薄い集団(IMT<0.812mm)、中程度の集団(0.812mm≦IMT<0.931mm)、厚い集団(0.931mm≧IMT)の3つの集団に分けて、プラバスタチン投与の有無および頸動脈硬化進行度と脳梗塞再発の関係を解析した。
その結果、対照群でIMTが厚い集団は薄い集団に比べ、アテローム血栓性脳梗塞の再発率が有意に高くなった。また、IMTが厚い集団においては、プラバスタチン群で対照群に比べてアテローム血栓性脳梗塞再発率が抑えられていたという。以上の結果から、頸動脈硬化が進展するとアテローム血栓性脳梗塞の再発率が高くなる傾向にあるが、低用量プラバスタチンの長期投与により再発が抑えられる可能性が示唆された。
日本人は欧米人に比べてプラバスタチン感受性が高いことから、長年低用量プラバスタチンが汎用されてきた。より強力なスタチン製剤や欧米と同じ通常用量のスタチン製剤を用いることで、さらなるアテローム血栓性脳梗塞の再発予防効果が期待できる一方、低コレステロール血症になり脳出血など出血性副作用が増える懸念もある。研究グループは「今後は、日本人の脳梗塞再発予防に適したプラバスタチン用量を検証するための研究が必要だ」と、述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース