■中医協で了承
中央社会保険医療協議会は15日の総会で、再生医療等製品として承認が了承されたノバルティスファーマのキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法「キムリア点滴静注」(一般名:チサゲンレクルユーセル)の薬価収載を了承した。米国では薬価が約5000万円と超高額薬剤であり、国内価格が注目されていたが、患者1人当たり3349万3407円と、欧米を下回る価格で決着した。22日付で薬価基準に収載される予定。
キムリアは、患者の末梢血から採取したT細胞にCD19を標的とするCARを発現させ、その細胞を静脈内に点滴投与する治療法。国内では3月に製造販売承認されている。ただ、患者一人ひとりに合わせて製造されることから、製造コストが膨らみ、米国で約5000万円、英国で約4120万円と、非常に高額な薬価が設定され、国内での保険適用のあり方が注目されていた。
今回、キムリアの薬価は原価計算方式で算定。製品総原価や流通経費などを積み重ねて算出した3072万7896円に、既存の治療方法で効果不十分な症例に有用性が示されていることなどから有用性加算35%、市場性加算10%を上乗せした結果、患者1人当たり3349万3407円と設定した。
間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は、再生医療等製品の増加を念頭に、「高額薬剤が保険適用されると全体の財政に影響し、慢性疾患の患者などにも支障が出ると懸念する。少しでも原価が下がる仕組みを検討すべき」と注文を付けた。
■米下回る価格「受け入れる」‐支払側、保険範囲見直しで意見
一方、キムリアの保険適用が了承されたことを受け、支払側の健康保険組合連合会と全国健康保険協会が総会後に記者会見し、「保険給付範囲の見直しに向けた意見」を公表した。
意見では、キムリアが患者に必要な医療を届ける観点から「極めて重要」と評価しつつ、医療保険財政への影響を考慮し、公的医療保険の給付範囲について除外も含めた見直しを検討するよう要望した。具体的には、重症疾患で個人負担が困難な医薬品は保険適用する一方、軽症疾患用医薬品についてはスイッチOTC薬を推進すると共に、保険適用の除外や償還率の変更などを実施することを求めている。
健康保険組合連合会の幸野庄司理事は、キムリアの薬価について「各国の価格よりも安価に設定されたことは受け入れる」と評価した一方、再生医療等製品の価格の決め方については「従来の医薬品と概念が異なるため、原価計算方式は見直しが必要。高額薬剤は費用対効果評価の対象としているが、これを見つつ、常に適正価格に見直していくことは追求したい」との考えを述べた。