プロバイオティクスは早産リスク低減につながるのか
富山大学は5月9日、早産のリスク因子を持たない女性で、妊娠前に、みそ汁、ヨーグルト、納豆を食べる頻度が多い人は、妊娠34週までに産まれてしまう早期早産の発生が少なくなることをエコチル調査により明らかにしたと発表した。この研究は、同大附属病院産科婦人科の齋藤滋教授(現・富山大学長)、伊藤実香診療助手らのグループによるもの。研究成果は、医学専門誌「Environmental Health and Preventive Medicine」に5月1日付でオンライン掲載された。
画像はリリースより
妊娠37週未満の出産を早産といい、日本の早産率は約5%と、他の先進国と比較しても低い。その中でも、34週未満の出産を「早期早産」と呼び、生まれた赤ちゃんが小さいと後遺症が残る可能性もある。早期早産の主要な原因のひとつとされているのが細菌感染。早期早産となった赤ちゃんの卵膜や胎盤には感染の影響がみられることが多く、細菌性腟炎がある人は早産のリスクが高いことがわかっている。また、糖尿病の人、免疫抑制の治療を受けている人は感染がおこりやすいため、早産のリスクが高いと言われている。このように、早産には感染とそれに対する免疫が関係している。
ヨーグルトや納豆はプロバイオティクスとも呼ばれ、乳酸菌や納豆菌が腸内細菌を変化させて、健康増進にプラスに働くことが次々と報告されている。多数の商品が特定保健用食品の表示を認可されており、中には免疫力を高め、細菌やウイルスに対する予防効果を示しているものもある。
みそ汁は週1、納豆は週3で早期早産リスク低減
環境省は、各関係機関と協働して、平成22年度から、子どもの健康と環境に関する大規模な全国調査である「エコチル調査」を実施している。今回、エコチル調査に参加した人の中から、これまでの出産が早産であった人(早産の強力なリスク因子)や、妊娠高血圧症候群や前置胎盤などの医療として人工的に早産となる可能性がある人を除いた7万7,667名について、3つの食品の摂取と早産の関連性を検討した。
妊娠前にみそ汁を食べる頻度が週1日以下と答えた人と比べて早期早産のなりやすさ(オッズ比)を調べたところ、週1~2日食べる人では0.58(95%信頼区間(CI)0.40-0.85)、週3~4日食べる人では0.69(95%CI 0.49-0.98)、週5日以上食べる人では0.62(95%CI 0.44-0.87)であり、いずれも統計学的に早期早産になりにくいということが判明した。ヨーグルトでは、週1回以下の人と比べて週5回以上食べる人では0.62(95%CI 0.44-0.87)、納豆では、週1回以下の人と比べて週3回以上食べる人では0.60(95% CI 0.43-0.84)であり、ともに統計学的に早期早産になりにくいということが判明。また、早産歴のある女性は納豆を食べた回数の多い方が、早期早産のリスクが下がった(オッズ比0.52(95%信頼区間 0.28-0.97))。一方、妊娠34~36週に分娩となる後期早産のなりやすさについては、いずれの検討においても発酵食品の摂取との間には関連がみられなかったとしている。
これまで、欧米の研究から、ヨーグルトの摂取が早産のリスクを減らす可能性があるということが示されてきた。しかし、みそ汁や納豆といった日本食特有の発酵食品については検討されていなかった。研究グループは「妊娠前の発酵食品摂取頻度を約7万8,000人の妊娠女性を対象に評価し、妊娠期間の検討を行ったのは世界で初めてであり、画期的な結果だ」と、述べている。
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・富山大学 ニュースリリース