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頭蓋底脳腫瘍に対する新たな神経内視鏡手術法を報告-大阪市大

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2019年05月09日 PM12:30

後床突起を簡便に切除し、脳への入口を広げる新手法

大阪市立大学は5月7日、頭蓋底脳腫瘍に対する新たな神経内視鏡手術法を報告したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科 脳神経外科学の後藤剛夫准教授、大畑裕紀大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は脳神経外科の学術誌「Journal of Neurosurgery」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

頭蓋底に発生する脳腫瘍である髄膜腫、頭蓋咽頭腫、脊索腫、軟骨肉腫などは、頭蓋底最深部、かつ中心部に発生した場合は、どのような頭蓋底手術を用いても切除に難渋することがある。この問題を解決すべく、数年前から内視鏡下に鼻腔を経由して頭蓋底に到達し、腫瘍を摘出する術式が行われるようになった。

同術式は、頭蓋底中心部に直接到達できる手術法であるが、手術操作を行える術野が非常に狭く、精密な手術操作を行うことが困難だった。そこで研究グループは、経鼻内視鏡手術法を用いて頭蓋底骨を手術用ドリルで広く削除することで手術野を大きく拡大し、複雑な頭蓋底脳腫瘍を安全に摘出可能な方法を開発した。

従来に比べ腫瘍の切除率が高く、44症例で良好な成績

2016年以降、同医学部附属病院において今回開発した手術法で腫瘍摘出を行った頭蓋底脳腫瘍44症例(頭蓋咽頭腫19例、脊索腫7例、髄膜腫6例、巨大下垂体腺腫6例、軟骨肉腫4例、その他の腫瘍2例)について具体的な手術法を紹介し、手術成績の検討を行った。

頭蓋底中心部に存在する脳腫瘍の場合、開頭手術で腫瘍を切除しようとすると、多くの脳組織が術野を遮ることとなる。一方、鼻腔に内視鏡を挿入し腫瘍に到達しようとすると、正常の脳組織を介在することなく直接病変に到達することができる。しかし、冠状断で病変を観察すると、通常頭蓋底にはトルコ鞍底、後床突起などの骨構造が存在する。この骨構造を手術ドリルで削除後、硬膜内病変に到達するが、トルコ鞍底両側には後床突起と呼ばれる切除困難な骨突起が存在するため、骨削除可能範囲はトルコ鞍底周囲に限られ、手術機器を安全に挿入できる範囲は非常に狭い範囲となる。つまり、腫瘍外側に手術機器が届かないため、内視鏡では観察は可能だが腫瘍の切除は不可能となる。

そこで研究グループは、トルコ鞍底周囲骨のみならず、両側の後床突起を削除して術野を拡大する方法を開発した。両側後床突起を含めた骨構造がなくなると、手術機器が到達可能な範囲が飛躍的に拡大。44症例の検討では、術野が左右方向に通常法に比べ平均2.2倍拡大していた。この手法により、これまで切除が困難だった頭蓋底中心部に位置する脳腫瘍を広い術野で安全に切除することが可能となった。

研究グループは、「本手術法の手技の詳細は、実際の手術例を用いた動画で解説しているため、今後頭蓋底脳腫瘍切除法の標準治療法となりえる有用な手術法といえる。今後、多くの頭蓋底脳腫瘍患者の治療成績を向上させるものと期待される」と、述べている。

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