gBRCA変異、HER2陰性局所進行または転移性乳がんの成人患者が対象
英国のアストラゼネカおよび米国のメルク・アンド・カンパニー(北米以外ではMSD)は4月10日、「リムパーザ」(一般名:オラパリブ)が、生殖細胞系列BRCA遺伝子変異陽性(gBRCA変異)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)陰性局所進行または転移性乳がんの成人患者に対する治療薬として、欧州委員会により承認を取得したと発表した。
この承認により認められる適応対象は、術前・術後補助化学療法、もしくは転移性がんの治療としてアントラサイクリン系およびタキサン系抗悪性腫瘍剤(禁忌でない場合)による化学療法の治療歴がある患者。また、ホルモン受容体(HR)陽性乳がんの患者についても、内分泌療法中または内分泌療法の終了後も病勢進行している場合、もしくは内分泌療法が適さないと判断された場合にはリムパーザによる治療の対象となる。
化学療法と比較して病勢進行または死亡のリスクを42%低減
リムパーザは、ファーストインクラスのPARP阻害剤であり、BRCA遺伝子変異陽性など、相同組換え修復(HRR)の欠損を有する細胞/腫瘍のDNA損傷応答(DDR)を阻害する最初の標的治療薬。リムパーザによるPARP阻害はDNA一本鎖切断に結合するPARPを補足し、複製フォーク停止と崩壊を惹起することで、DNA二本鎖切断を起こし、がん細胞を死滅させる。
今回の承認はリムパーザの有効性および安全性を医師の選択した化学療法(カペシタビン、エリブリンあるいはビノレルビン)と比較検討した無作為化、非盲検の第3相試験であるOlympiAD試験のデータに基づいている。無増悪生存期間(PFS)は、化学療法群に比べてリムパーザ群で有意に延長し、優越性が検証された(ハザード比=0.58〔95%信頼区間: 0.43〜0.80〕、p=0.0009、層別log-rank test)。PFSの中央値は、リムパーザ群7.0か月に対し化学療法群4.2か月となり、リムパーザ群で2.8か月延長。リムパーザを服用した患者の客観的奏効率(ORR)は52%だったのに対し、化学療法群では23%だった。
リムパーザは今回、欧州において3件目となる適応承認を受けた。アストラゼネカとMSDは、複数のがん種を横断してリムパーザをより多くの患者に1日も早く届けるべく共同開発を進めている。リムパーザにおいては、gBRCA変異を有するHER2陰性乳がん患者の術後補助療法として評価するOlympiA試験をはじめ、広範な臨床開発プログラムが進行中。
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・アストラゼネカ株式会社 プレスリリース