産学連携オープンラボは、第一三共葛西研究開発センター(東京都江戸川区)内の賃貸ラボスペースの1部屋(約113m2)に設ける計画。部屋を2区画に分け、一つは製薬企業や創薬支援企業、大学から研究者が出向いて共同研究を実施するエリアとして活用する。高感度質量分析装置など基本的な実験設備を整える予定だ。
もう一つの区画は、創薬支援企業が持つ技術の紹介エリアにする見通し。通常の学会や展示会に比べて割安の費用で技術をアピールできる場所として、各社の装置や機器を数カ月ごとに常設展示。デモや講習会なども行えるエリアとして役立ててもらう。参加企業から得た研究費や展示費をラボの運営に充てる考え。
これまで同センターは、創薬研究、創剤研究、製剤技術研究をテーマに三つのコンソーシアムを設け、製薬関連企業の参加を得て現場の課題解決を重視した産学連携の推進に取り組んできた。講演会形式の「研究会」、各テーマについて課題を掘り下げる「検討会」、共同研究を実施する「分科会」を設定。大学が取りまとめ役になることで、複数の製薬関連企業が連携し、共通課題の解決に向けて共同研究を行える体制を整備した。
産学連携オープンラボ構想は、創剤研究コンソーシアムの共同研究を推進するため計画された。2019年度は、個体分散体の製造と安定性評価の共同研究を引き続き実施するほか、サル脳内薬物濃度の推移モデル構築を目指した共同研究を新たに開始し、中枢神経を標的にした薬剤開発に役立てる。新たな添加剤になり得る化合物の有用性や可能性を評価する共同研究も開始する見通しだ。
これまで各分科会での共同研究は、外部業者に委託して実験データを取得したり、大学や各企業で分担して実験する形で進められてきたが、共同研究の推進には専用施設があった方が望ましいとして、ラボの設置を計画した。
ラボの実現は、企業からの賛同が得られるかどうかにかかっている。共同研究の費用は参加企業で分担するため、1社単独で実施する場合に比べ、少額の費用で大きな成果を得られることが特徴。複数の大学、研究機関の専門家がアドバイザーとして参画しており、効率的に助言を受けられることもメリットになる。