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【徳島大学研究グループ】高脂血症薬に新薬効か-抗癌剤誘発の腎障害を抑制

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2019年04月22日 AM11:45


■企業と共同でDR目指す

高脂血症治療剤フェノフィブラートは、抗癌剤シスプラチンによって誘発される腎障害の予防薬になる可能性があることを、徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬理学分野研究室・同大学病院薬剤部の研究グループが見出した。副作用自発報告のリアルワールドデータ(RWD)を解析して候補薬を抽出。その一つである同剤を腎障害モデルマウスに投与したところ、シスプラチン誘発腎障害を有意に抑制することが明らかになった。既に製薬企業との共同研究を開始しており、同剤のドラッグリポジショニング(DR)や新薬創生につなげたい考えだ。

シスプラチンは、多くの固形癌患者の標準治療に用いられる必須の薬剤だが、腎障害の副作用が発生することが問題となっている。ただ、現時点でそれを防ぐ推奨薬は存在しないのが現状。臨床現場では、腎障害軽減のため大量輸液による水分負荷が行われているものの、患者負担が大きい上、腎障害を完全に防ぐことはできず、新たな予防法の確立が求められていた。

そこで研究グループは、まず米国食品医薬品局(FDA)が公開している世界最大規模の副作用自発報告データベース「FAERS」のデータを解析し、シスプラチン誘発腎障害を軽減させる可能性のある薬剤を抽出。FAERSを解析した結果、急性腎障害を発症した患者数は、シスプラチン単独投与患者では2万8695人中2303人(発症率8.73%)だったが、シスプラチンとフェノフィブラートが併用された患者では60人中2人(発症率3.33%)にとどまっていた。有意差は認められなかったが、併用群の発症率は低かった。

FAERSの解析によって、向精神薬フルオキセチンや抗酸化剤アスコルビン酸など、他の薬剤にも可能性が見出される中、臨床応用も考慮してフェノフィブラートを予防薬候補に設定。マウスを用いてシスプラチン誘発腎障害モデルを作製し、フェノフィブラートを4日間投与する動物実験を行ったところ、シスプラチンによる腎障害の程度を50%ほど抑制できることが明らかになった。

これらの研究から、フェノフィブラートがシスプラチン誘発腎障害の予防薬になる可能性が示された。同研究室特任助教の合田光寛氏は「現在、製薬企業との共同研究を進めており、最終的にはフェノフィブラートのDRや、同剤をもとにした構造展開を行い、腎障害に対する新薬の創生を目指したい」と語る。

作用機序は不明だが、フェノフィブラートの標的である「ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α」(PPARα)を介した機序を想定しており、詳細な機序解明も進める計画だ。

DRは、既存薬に新たな作用を見出し、別の疾患治療薬として開発する創薬戦略。開発中止リスクを軽減できるほか、開発期間を短縮し、費用も抑制できるとして、近年研究が盛んになっている。同研究室は、以前から細胞や動物で検証する基礎研究とRWD解析という二つの切り口でDR研究を推進しており、その一環として今回の研究に取り組んだ。

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