中心体が3つになったら、どう分裂するのか?
国立遺伝学研究所は4月17日、過剰数の中心体を有した細胞がその分裂のパターンを決定する仕組みを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所博士研究員の近藤興博士(現・東京大学 助教)と細胞建築研究室の木村暁教授によるもの。研究成果は、米国細胞生物学会が発行する「Molecular Biology of the Cell」の「細胞内外の力学(Forces on and within Cells)」をテーマとした特集号(7月22日発行予定)に掲載される。
動物細胞が遺伝情報を2つに分配し分裂するとき、細胞小器官の「中心体」が重要となる。正常な分裂期の細胞では中心体は2つだが、それ以上の数になった細胞は一体どうなるのかは、これまで未解明だった。
画像はリリースより
がん細胞などの分裂を人為的に制御できる可能性
今回の研究では、モデル生物である線虫C.elegansの受精卵を使って、中心体を3つに増やした細胞を遺伝学的に作出し解析。3つの中心体をもつ細胞は3つに分裂すると予想されたが、実際にそのようになった細胞は、わずか30%で、残りの70%は、あたかも正常であるかのように、2つに分裂した。
この違いを詳細に解析した結果、いずれの細胞でも形成されていた「3つの中心体を頂点とする三角形状の紡錘体」と細胞長軸のなす角度が、分裂パターンと相関することを見出したという。さらに同研究グループは、画像解析とコンピュータ・シミュレーションを駆使し、この紡錘体の配置は、「細胞の形状」「中心体にかかる力」「中心体の大きさの違い」の3つに起因する力の非対称性によって決定されることを突き止めた。
この研究の成果は、細胞内力学の基本的な理解につながるとともに、がん細胞などさまざまな細胞の分裂を人為的に制御できる可能性を示唆していると研究グループは述べている。
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