■大阪天王寺区で調査‐処方変更も「任せられる」
大阪市天王寺区の基幹病院5施設と薬局が疑義照会を不要とするプロトコールを導入した結果、医師の大半はこの取り組みを良いと評価していることが、5病院の医師を対象に実施したアンケート調査で分かった。薬局薬剤師の処方変更についても「任せることができる」など肯定的に捉える医師が約9割を占めた。調査をまとめた大阪赤十字病院の小林政彦薬剤部長は、「多くの医師は、業務の負担軽減効果はそれほど実感していないにも関わらず、患者さんのためになると考えており、取り組みに好意的だった」と話している。
天王寺区では2016年11月から、NTT西日本大阪病院、大阪警察病院、大阪赤十字病院、四天王寺病院、早石病院の五つの基幹病院と薬局が連携して策定したプロトコールに基づき、これまで疑義照会として薬局薬剤師が医師に問い合わせていた内容の一部を不要とし、事後報告で済ませる取り組みが始まった。
天王寺区内の23薬局とスタートした後、生野区、東大阪市、八尾市などの薬局も加わるようになり、現在は236薬局と合意を締結している。疑義照会件数は取り組み前に比べて半減したと見られる。
疑義照会を不要とするプロトコール策定の効果を検証するため、今年1月に大阪府薬務課による事業の一環として、5病院と天王寺区薬剤師会が共同で5病院の外来担当医師を対象にアンケート調査を実施。286人の医師に調査票を配布し、145人から回答(回収率50.7%)があった。
その結果、「問い合わせ簡素化は良い取り組みと思いますか」と質問し、「良いと考える」から「そうは思わない」まで4段階で回答してもらったところ、否定的な回答をしたのは2人のみで、大半の医師は取り組みを肯定的に評価した。医師からは「薬剤師の業務範囲として自然」「医師の業務軽減のため推進してほしい」などの声が上がった。
また、薬局薬剤師に処方変更を任せることについて「任せることができる」から「安心できない」まで4段階で回答してもらったところ、肯定的な回答をした医師は全体の88.9%を占めていた。「薬に関して責任を持って対応してくれる印象があるため、心配なさそう」などの回答が得られた。
患者への影響についてプロトコール策定の取り組みが「患者さんのためになった」から「悪影響」まで5段階のどこに位置づけられるかを聞くと、肯定的な回答をした医師は78%に達し、「患者のニーズに即した対応ができる」などと評価する声が上がった。他の病院でも進めるべきと考える医師も多かった。
一方、取り組み開始後の疑義照会件数や対応時間について聞いたところ、件数は全体的に減る傾向にあったが、1日当たりの対応時間は増えていた。簡単な問い合わせが減り、実際に対応するのが内容の濃い疑義照会ばかりになった結果、医師は回答に時間が必要と実感するようになったようだ。業務負担の軽減効果も医師によって実感はばらついていた。
これら調査結果を総合的に評価すると、医師は自らの業務負担の軽減効果はそれほど実感していないにも関わらず、取り組みを肯定的に捉えていることになる。小林氏は「医師は薬局薬剤師の役割を認識し、安心できると回答している。そのことが、他の病院でも取り組んでほしいという思いにつながっている」と話している。