DAA製剤の治療不成功で生じる、新たな薬剤耐性関連変異が問題に
東京医科歯科大学は4月10日、難治性C型肝炎ウイルスに関連する薬剤耐性関連変異(P32欠失変異、A92K変異)が高度耐性、かつ一部の変異は高増殖性であることを明らかにし、さらにこれら超難治性ウイルスに有効な薬剤を同定したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科肝臓病態制御学講座の朝比奈靖浩教授、同消化器病態学分野の渡辺守教授、同医学部附属病院消化器内科の新田沙由梨特任助教らと、国立感染症研究所と大阪大学との共同研究によるもの。研究成果は、国際科学誌「Scientific Reports」オンライン版にて公開されている。
画像はリリースより
C型肝炎ウイルス感染患者は国内に100~150万人と推定されているが、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんの主たる原因であり、その対策が急務とされている。
近年、直接型抗ウイルス薬(DAA製剤)の登場により、高率にウイルス排除が達成可能となった一方、DAA製剤の治療不成功となった症例では、新たな薬剤耐性関連変異が生じ、問題となっていた。
超難治性ウイルスを排除できる抗ウイルス療法の開発へ
研究グループは、薬剤耐性ウイルスに有効な薬剤を探索することを目的に研究を行った。まず、独自に開発した培養細胞内で増殖するC型肝炎ウイルスを用いて、そのウイルスに遺伝子変異を導入した変異ウイルスを作成。なお、導入した変異は、DAA製剤による治療を行ってもウイルスが排除できなかった患者に生じたウイルス変異、すなわちNS5A領域のP32欠失変異とA92K変異を中心とする1つあるいは他の変異と組み合わせた複数の変異とした。
その結果、R30QとA92Kの2つの変異が入ったウイルスでは、高度の薬剤耐性を獲得するのみならず、ウイルスが増殖しやすくなることが判明。また、P32欠失変異あるいはA92K変異がひとつでも入ったウイルスでは、NS5A阻害薬という最も使用されている抗ウイルス薬が極めて効きにくい、すなわち高度薬剤耐性ウイルスとなることが明らかになった。一方、リバビリンやグラゾプレビル、ソホスブビルといった他の種類の抗ウイルス薬は、これらの変異ウイルスに対して有効であることが明らかとなった。
今回、同研究グループが先駆的に開発したウイルス培養増殖系を用いた研究により、新たな知見を得ることができ、高度薬剤耐性変異をもつウイルスに有効な薬剤を同定することにも成功した。
これらの薬剤の組み合わせや、今回同定された薬剤と同じ種類の薬剤の効果を検証していくことにより、これまで治療法のなかった超難治性ウイルスを排除することのできる抗ウイルス療法の開発に繋がることが期待される。
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