会議翌日の10日に記者会見した日本製薬工業協会の中山讓治会長(第一三共会長)は、「アジアで行われている承認審査は国ごとで状況が違う。欧州のような相互承認体制は考えておらず、アジア各国の立場を尊重しながら相互理解を深め、申請までのプロセスを早めていきたい」と述べた。
今回の会議で合意に至った「規制当局間の協力による革新的医薬品の効率的な審査推進」(リライアンス・パスウェイ)は、新薬アクセス改善を推進する世界保健機関(WHO)が提唱している考え方だ。既に新薬審査や承認を実施した規制当局の審査報告書を、別のアジアの規制当局が活用し、審査にかかる人件費や時間を短縮するというもの。次回会議で提言として発表し、アジア共通の枠組みとして導入していく。
各国の規制当局が均質なレベルにある欧州EMAに比べると、アジア各国では新薬審査で格差があるのが現状。今後、アジアの規制当局が緊密に連携し、審査を効率化するため、APACが主導してトレーニングを実施する。
さらに、マレーシアやタイ、インドネシアとは、新薬承認後に原薬や製剤の製法や製造場所、処方などの変更に当たって、規制当局に提出する安定性試験データの取り扱いでも声明書を発表した。東南アジアの一部では、原薬や製剤の変更申請を行う際に、安定性試験の追加データが求められることがあるが、今後は企業と規制当局間で変更承認後に試験実施で合意できていれば、申請時に追加データを提出しなくてもよいとする申請手法を進める。
アジア諸国で実施している天然物創薬プロジェクトでは、昨年12月にはAPAC天然物創薬コンソーシアムを立ち上げている。今後はコンソーシアムに参画する国や研究機関、製薬企業を増やし、天然物ライブラリーを構築。アジア若手研究者を日本の製薬企業で育成していくプロジェクトも開始し、既にタイの若手研究者が武田薬品の湘南研究所に派遣されている。