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インターフェロンの抗白血病作用の分子メカニズムの一端を解明-京大

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2019年04月09日 PM12:45

慢性骨髄性白血病の根治に必要な白血病幹細胞の根絶

京都大学は4月5日、従来から一部の白血病治療に用いられてきたインターフェロンの作用の分子メカニズムの一端を解明したと発表した。この研究は、同大医学研究科の横田明日美研究員(現・シンシナティ小児病院医療センター研究員)、同大医学部附属病院の平位秀世助教と前川平教授(現・京都府保健環境研究所所長)らの研究グループのよるもの。研究成果は、国際学術誌「Blood Advances」のオンライン版に掲載されている。


画像はリリースより

慢性骨髄性白血病は、相互転座と呼ばれる染色体の異常によって生じたBCR-ABLという異常タンパク質が原因で起こる。BCR-ABLは、全ての血液細胞の源となる造血幹細胞の中でさまざまな分子を活性化し、白血病の発症と進展をもたらす。現在は、BCR-ABLの作用を抑制するチロシンキナーゼ阻害剤が開発されており、その予後は以前と比べ、大幅に改善している。しかし、薬剤が効きにくい場合や、よく反応していても薬剤を中止すると再発するケースもあるため、根治を目指すにはさらに優れた治療法の開発が必要だ。そのためには、これら薬剤耐性や再発の原因となる「」を根絶することが重要と考えられている。

これまでに研究グループは、感染症などに反応して白血球が増える際には C/EBPβというタンパク質が造血幹細胞の中で重要な働きをしていることを明らかにしていた。C/EBPβは、造血幹細胞の分化と増殖を促進。さらに、慢性骨髄性白血病では、BCR-ABLがSTAT5というタンパクの作用を介してC/EBPβを活性化し、白血球増加をもたらしていること、C/EBPβが上昇すると白血病幹細胞が分化して枯渇する方向に作用することを見出していた。これらの結果から、研究グループは薬剤によってC/EBPβをさらに活性化することができれば、白血病幹細胞の枯渇を強力に誘導することができ、最終的には根絶できるのではないかと考えた。

、効率よくC/EBPβを活性化

今回研究グループは、慢性骨髄性白血病モデル細胞を用いて、さまざまな化学物質、生理活性物質を検討。その結果、これまでに慢性骨髄性白血病の治療に用いられてきたインターフェロンαが効率よくC/EBPβを活性化することが明らかになった。

インターフェロンαの刺激は慢性骨髄性白血病細胞内でタンパク質STAT1とSTAT5を活性化し、これらが直接C/EBPβの発現を亢進。もともとBCR-ABLよってSTAT5が活性化されている慢性骨髄性白血病内では、インターフェロンαのC/EBPβ活性化作用が増強される。実験動物を用いた慢性骨髄性白血病モデルにおいて、インターフェロンαは慢性骨髄性白血病の白血病幹細胞の分化を誘導して枯渇に導くという観察結果が得られ、その作用はC/EBPβに依存しているということが判明した。また、正常な造血幹細胞に比して、白血病幹細胞はインターフェロンαに対し、高い感受性を持つことも示された。慢性骨髄性白血病の患者の白血病細胞を用いた場合でも、細胞や実験動物で観察されたのと同様に、インターフェロンαがC/EBPβの発現を亢進させることに加え、白血病幹細胞の枯渇を誘導するという作用が確認できた。

以上の結果から、インターフェロンαの慢性骨髄性白血病への効果において、少なくともその一部は、C/EBPβの活性化を介した白血病幹細胞の枯渇誘導によるものと考えられるという。

今後、インターフェロンαの白血病幹細胞に対する作用メカニズムがさらに明らかになれば、投与量や投与スケジュールの見直しによって、現在の治療成績を改善できる可能性がある。今回の研究では、慢性骨髄性白血病以外の白血病についても同様のメカニズムが存在する可能性が示されており、インターフェロン以外のC/EBPβを活性化する物質の探索も含め、今後の開発が期待される。

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