DPP-4阻害薬と比較してSGLT2阻害薬を評価
ドイツのベーリンガーインゲルハイムと米国イーライリリー・アンド・カンパニーは3月28日、SGLT2阻害薬のエンパグリフロジン(製品名:ジャディアンス(R))とDPP-4阻害薬を比較したリアルワールド研究「EMPagliflozin compaRative effectIveness and SafEty(EMPRISE)」における米国の結果を、2019年のAMCP(マネージドケア薬学会)およびACC(米国心臓病学会)で公表したと発表した。これは、研究開始から2年間の最初の3万5,000人を対象とした、医療資源の利用と安全性に関する結果である。
エンパグリフロジンは、1日1回経口投与の選択性の高いナトリウム依存性グルコース共輸送担体(SGLT2)阻害薬で、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載された初めての2型糖尿病治療薬。高血糖の2型糖尿病患者に同剤を投与し、SGLT2を阻害することで、過剰な糖を尿中に排出させる。さらに、塩分(ナトリウム)を体外に排出させ、循環血しょう量を低下させる。なお、日本における同剤の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントのリスク減少、慢性心不全に関連する効能・効果は取得していない。
入院のリスクや、心不全による入院・全死亡リスクの低下と相関
AMCPにおける今回の観察研究では、同剤はDPP-4阻害薬と比較して、全ての入院リスクの22%の低下と相関することが明らかとなった。なお追跡調査期間中央値は5.4か月だった。入院患者のうち、同剤を投与された患者は、DPP-4阻害薬を投与された患者と比較して早期に退院したことも示された。さらに、同剤はDPP-4阻害薬と比較して、救急来院や外来での再受診の低下と相関することが示された。これらの結果は、心血管疾患既往2型糖尿病患者において、同剤がプラセボと比較して、全ての入院のリスクを11%低下させたEMPA-REG OUTCOME(R)試験のデータを裏付けるものとなった。
さらに、ACCにおける研究結果では、同剤は、DPP-4阻害薬と比較して、心不全による入院または全死亡リスクの42%の低下と相関し、骨折または下腿切断のリスク上昇とは相関しないことが示された。これらの結果は、心血管疾患既往2型糖尿病患者において、同剤がプラセボと比較して、心不全による入院または心血管死のリスクを34%低下させ、同剤とプラセボ間で骨折や下肢切断に不均衡がみられなかったEMPA-REG OUTCOME試験の結果を裏付けるものとなった。
EMPRISE研究は、EMPA-REG OUTCOME試験の結果を補完し、日常診療における同剤の包括的な臨床像を示すことを目的に2016年に開始されたもの。EMPRISE研究の終了までには、心血管疾患の罹患を問わず2型糖尿病患者を対象とした、同剤の日常診療における有効性、安全性、医療資源の利用、医療費について DPP-4阻害薬と比較したデータが提供されることになる。評価対象は、米国内での同剤の使用開始から5年間にあたる、2014〜2019年。研究終了までに、米国の2つの民間の医療供給者とメディケアを利用する20万人を超える2型糖尿病患者の組み入れを計画している。