■福岡大などグループ
薬局薬剤師が副作用を回避したり、重篤化を防いだりする薬学的介入を行った結果、大きな医療経済効果が得られたことが、福岡大学大学院薬学研究科などのグループの研究によって明らかになった。久留米三井薬剤師会が収集したプレアボイド事例を、薬学的介入によって副作用発現を未然に回避できた事例と重篤化を防げた事例に分類して解析。これらを防げなかった場合、7708万円の医薬品副作用被害救済費用が必要になると推算した。介入による費用抑制額は、調剤報酬に比べてはるかに大きいことを示した。
研究に取り組んだのは、福岡大学大学院薬学研究科臨床薬剤学研究室、同薬剤師会、福岡大学病院薬剤部、第一薬科大学のグループ。2010年度から17年度まで会員薬局が薬剤師会に報告したプレアボイド事例について、副作用発現を未然に回避できた287件と重篤化を防止できた10件に分類し、解析した。
医療経済効果の推算は先行研究を参考にし、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の医薬品副作用被害救済制度による給付件数と支給額をもとに、1件当たりの救済費用を算出。重大な副作用は1件当たり214万円、ハイリスク薬は1件8万4000円、非ハイリスク薬は1件5万6000円とし、これを各事例に当てはめて推算した。
報告されたプレアボイド事例のうち、このまま放置すると副作用発現や再発、増悪を招いて救済制度の対象となるものは249件あった。その内訳は、副作用発現の未然回避事例239件、重篤化防止事例10件。これらを防げなかった場合、被害救済費用として7708万円の支払いが必要になると推算。介入による費用抑制額は、調剤報酬に比べてはるかに大きいことが分かった。
副作用の重篤化を回避した10件の内訳は、▽排尿障害(アミトリプチリン)▽発疹・吐き気(セフカペン)▽肝障害(テルビナフィン)▽血栓症(ラロキシフェン)▽出血(ワルファリン)▽眼瞼浮腫(プレガバリン)▽横紋筋融解症(ガレノキサシン)▽浮腫(ニコランジル、モンテルカスト、ボノプラザン、シロスタゾール、ベラパミル)▽不整脈悪化(タダラフィル)▽めまい、ふらつき(プレガバリン)――となった。
薬局薬剤師が副作用発現や重篤化を防いだきっかけの割合を調べたところ、お薬手帳42%、薬歴19%、患者の訴え15%、処方箋13%、検査値6%などだった。疑義照会を行った理由としては、同種同効薬の重複20%、禁忌14%、同成分重複12%、併用禁忌11%、誤処方の疑い11%、過量投与7%などとなっていた。
お薬手帳によって、他院処方薬との相互作用、同種同効薬や同成分の重複を発見することが多かった。重複が多い同種同効薬は、胃酸分泌抑制薬、抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)だった。腎機能の低下を把握するなど、検査値が介入のきっかけになった事例もあった。
疑義照会による処方変更の内訳は、中止48%、変更30%、減量11%、増量5%など。薬剤が中止された理由は同種同効薬の重複41.3%、同成分重複23.9%、併用禁忌9.4%などだった。薬剤が変更された理由は禁忌31.8%、併用禁忌21.2%、誤処方21.2%などとなっていた。