幻肢痛を緩和させるVRシステムのリハビリが無効な患者も
東京大学は3月29日、バーチャルリアリティー治療で緩和される幻肢痛の特徴を明らかにしたと発表した。この研究は、同大学医学部附属病院緩和ケア診療部の住谷昌彦准教授が、幻肢痛の当事者でありエンジニアである猪俣一則氏(株式会社KIDS代表)、畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターの大住倫弘助教らと共同で行ったもの。研究成果は「Pain Medicine」(オンライン先行)にて発表されている。
画像はリリースより
手足の切断後などは、失われたはずの手足の存在を感じるだけでなく、幻の手足(幻肢)が痛むことがあり、「幻肢痛」と呼ばれている。
これまでの研究で、仮想現実(Virtual Reality:VR)システムで幻肢を随意的に動かすリハビリを行えば、幻肢痛が緩和されることが明らかにされていたが、一方で、無効な患者もいることがわかっていた。
運動感覚に関連した痛みを有する患者に効果的と判明
研究グループは今回、幻肢痛患者の痛みの性質に着目し、“どのような性質の痛み”にVR治療が有効なのかを分析した。
実施したVR治療は、住谷准教授が研究を重ねてきた鏡療法が基盤となっており、対象者は健肢を動かすことによって、幻肢を随意的に動かしているような仮想体験をすることができる。同システムで神経リハビリ治療を行った結果、ほとんどの対象者が幻肢の随意運動を獲得しただけでなく、幻肢痛の緩和を経験することができた。
また、今回参加した対象者の幻肢痛を多変量解析した結果、「“筋肉がひきつるような”などの運動感覚に関連した幻肢痛」と「“焼けるような”などの皮膚感覚に関連した幻肢痛」に大別することができた。さらにVR治療は、前者の運動感覚に関連した幻肢痛を有する対象者において効果を発揮しやすいことがわかったという。
今回の研究成果により、VRリハビリによって緩和しやすい幻肢痛の特徴が明確にされたことになる。さらに、痛みの性質が治療反応性を規定する可能性を示したことから、痛みの性質に応じたオーダーメイド医療への発展的可能性を提案できるとしている。
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