適切な治療介入により患者の予後改善が認められる可能性
日本医療研究開発機構(AMED)は3月28日、「大量出血症例に対する血液製剤の適正な使用のガイドライン」を策定し、日本輸血細胞治療学会誌ならびに日本輸血・細胞治療学会ホームページで公開したと発表した。この研究は、国立循環器病研究センター臨床検査部の宮田茂樹部長らの研究班によるもの。
外傷による急性期死亡の20~40%は出血が原因との報告もあるように、大量出血症例の予後は良くない。しかし、この50%以上が「凝固障害を来たしたことによる」と報告されているように、適切な治療介入により患者の予後改善が認められる可能性がある。また、大量出血症例に輸血される血液製剤の使用割合も多く、早期止血を導く治療法が確立されれば、血液製剤使用量の削減も可能となる。これは、日本における少子高齢化に伴う血液製剤の需給バランスの悪化の懸念に対しての、有効な解決策ともなり得る。
これらのことから、最新の科学的エビデンスに基づいた大量出血症例に対する輸血ガイドラインの策定は、患者予後改善、血液製剤の適正使用、使用量削減に貢献できる可能性があり、その早期策定が求められていた。
ガイドラインが最適な輸血療法の検討に貢献することを期待
研究班は、大量出血患者の輸血(止血)治療における重要臨床課題を整理し、「フィブリノゲン製剤」「大量輸血プロトコール(MTP)」「プロトロンビン複合体製剤(PCC)や遺伝子組み換え活性型凝固第VII因子(rFVIIa)」「抗線溶療法」に関する4つのClinical Question(CQ)を設定。関連する5,000を超える文献に対するsystematic reviewを行い、エビデンス総体を抽出し、systematic review reportとしてまとめた。
ガイドライン作成グループは、心臓血管外科、外傷、産科、その他の4領域に分けて、各CQに対するエビデンス総体の総括を実施。「Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014」に準じ、推奨文ならびに推奨の強さの暫定的な判定を行い、班会議の審議を経て最終決定した。推奨に際し、日本の実臨床に合わせていかに活用するかについても、Practice pointsとして言及。策定したガイドライン(案)をもとに、パブリックコメントを収集後、修正を加え、最終版として上梓したという。
研究班は「本ガイドラインが、本邦での、予後の悪い重篤な大量出血症例に対する最適輸血療法の検討に貢献し、問題点の整理、実施体制の再構築につながることを期待している」と、述べている。
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