医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > プレミアム > 【アステラス製薬】AI創薬の本格運用開始-一部工程をほぼ半分に短縮

【アステラス製薬】AI創薬の本格運用開始-一部工程をほぼ半分に短縮

読了時間:約 2分23秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年04月01日 PM12:30


■実験減らし全体最適化

アステラス製薬は、)を活用した創薬の本格的運用をスタートさせた。研究開発費の低減や研究開発スピードの向上が求められる中、AIで高速化・効率化を図ると共に、研究者の経験と勘では着想できないアイデアから革新的新薬を生み出す。過去に蓄積した化合物の合成データをもとに、標的蛋白質と親和性が高く、毒性を回避できる化合物を自動的に設計する技術や薬理・毒性試験を一部代替する技術を確立。一部のプロセスでは、従来に比べほぼ半分の期間で期待する成果が得られた。今後は、創薬プロセス全体をAIと組み合わせることで、これまで非臨床段階で実施していた実験を減らし、短期間で新規化合物の臨床試験入りが可能になるよう経験値を積み上げたい考えだ。

同社では、全社的にAIやビッグデータの利活用を目指しているが、最も先行している領域が創薬分野だ。現在は、▽AIを用いた化合物特性予測の高精度化▽AIによる分子設計▽AIによる化合物構造変換のパターン認識▽AIによるセンサーデータ解析――の4段階でAIの導入が始まっている。

AIの分子設計では、低分子化合物を自動設計できる技術を開発した。標的蛋白質に活性のあるヒット化合物の合成展開パターンや、そこで使った試薬の実績などのデータをAIに与える。これにより、分子設計時に化合物構造から化学修飾する最適な部位や使用する試薬などを指示し、標的蛋白質と親和性が高く毒性を回避できる低分子化合物の構造を自動的に導き出すというもの。

AIによる活性予測精度が向上すれば、薬効や毒性を評価するために、従来実施してきた細胞や動物を用いた薬理・動物試験を減らすこともできるという。

AIの分子設計から短期間で臨床試験入りを目指す突破型創薬を進める一方、AIで自動設計した化合物から未知の類縁化合物構造を探し出す創薬で、新たな活路を見出す。合成研究者が思いもつかないような、当初設計した化合物とは母核が異なる類縁化合物を創出し、ファーストインクラスの新薬を狙う。

また、AIの深層学習が得意とする画像解析を駆使し、非臨床で突然変異などを調べる遺伝毒性試験「Ames試験」の陽性化合物、陰性化合物を正しく予測する評価ツールも開発した。

Ames陽性化合物では化合物構造からAmes陽性化合物によく見られる部分構造を光らせて画像で表示。これまで、なぜAIが陽性と判断を下したのかの根拠が不明だったが、「説明可能なAI」の技術で課題を解決した。Ames陰性化合物でも、陽性化合物でよく見られる部分構造を持つものの、陰性と判断した理由について、化合物構造から示せるようにした。

ただ、現段階では個別の創薬プロセスでの限定的な活用にとどまり、全体として導入効果を創出していくことが課題となっている。同社でビッグデータやAIの活用を推進するアドバンストインフォマティクス&アナリティクス室では、データマイニングやAI技術に精通した人材が揃うほか、実臨床のカルテ・レセプトデータなど大量のリアルワールドデータを保有している。研究所の各部門から上がってくる要望を聞きながら、密接な連携により創薬プロセス全体でAIを組み合わせて生産性を高める。

角山和久室長は、研究者でなければできない業務、AIでなければできない業務が混在している過渡期にあると指摘した上で、「人間が思いつくものはAIが思いつくようになり、思いつかないものもAIが思いつくようになる。人間はより高度な課題に取り組むようになって、結果的に多くの新薬が生み出されるだろう」と話している。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 プレミアム 行政・経営

  • 【PMDA】コロナ薬投与で注意喚起-妊娠可能性ある女性に
  • 【薬価部会】不採算品再算定、対象絞り込みを-25年度中間年改定
  • 【厚労省調査】敷地内薬局、専門連携の1割-処方箋集中率は93.1%
  • 【臨試協調査】外資が日本を第I相拠点に-国内実施のメリット認識か
  • 【NPhA】半数以上が後発品を選択-長期品選定療養に一定効果