風疹ウイルスの約17%で出現を確認
日本医療研究開発機構(AMED)は3月26日、麻疹に特有の臨床所見とされていたコプリック斑は、風疹や他のウイルス感染症でも出現することが明らかになったと発表した。この研究は、地方衛生研究所全国協議会、群馬パース大学大学院、横浜市立大学医学部ならびに国立感染症研究所が共同で行ったもの。研究成果は、「Frontiers in Microbiology」に掲載されている。
研究グループは、2009~2014年までの間、全国の衛生研究所で検査された3,023例の麻疹あるいは麻疹疑い患者において、遺伝子検査(RT-PCR法)を主体とした方法により、検出されたウイルスとコプリック斑を主体とした臨床所見について詳細に解析。その結果、今回調査した3,023例中、421例から麻疹ウイルス、599例から風疹ウイルス、50例からパルボウイルスB19型ならびにその他のウイルス(ヘルペスウイルス6型など)が検出された。
また、コプリック斑は、麻疹ウイルス検出例のうち約28%、風疹ウイルス検出例のうち約17%、パルボウイルスB19型検出例のうち約2%に認められた。これらのことから、コプリック斑は、麻疹ウイルス以外の感染でも出現することが明らかになっていた。
正確な診断には、臨床所見だけでなくウイルス検査が必須
ウイルス感染症の臨床診断は、臨床症状のみから診断、臨床症状+免疫抗体価上昇による診断、臨床症状+ウイルス検査による確定診断、という段階を経て進歩してきた。臨床症状が重要であることはもちろんだが、ウイルスを直接検出する遺伝子検査以上に確実な診断根拠はない。また、麻疹ウイルスには、不顕性感染はまずないことから、麻疹ウイルスの検出は、麻疹の発病そのものを意味する。
今回得られた結果の臨床的な意義を、研究グループは以下のようにまとめている。
1)コプリック斑は、依然として麻疹の診断に有用であることに変わりはないが、これまで信じられてきたように、麻疹にのみ特異的な臨床所見ではないことが明らかになった。
2)麻疹と他のウイルス感染症を、臨床所見から確実に鑑別することは上記の理由から困難であり、また、今後、修飾麻疹(幼少時に1回のみワクチンを接種しているなど、麻疹に対する免疫が不十分な人が感染した場合、軽症で非典型的な麻疹を発症すること)が増える可能性も併せて考えると、麻疹疑い症例においては、確実に全例でウイルス検査を実施し、ウイルスの検出をもって麻疹の診断を確定するという、科学的根拠に基づいた診断手順を、臨床医家に広く周知し、理解と協力を得ることが重要。
3)現行の行政によるウイルス検査を、今後も公的制度として担保し、維持することが必要。
研究グループは「麻疹は、感染力が非常に強く、重症化しやすい疾患であり、正確かつ迅速なウイルス検査に基づく、検査診断が必要不可欠である。また、他の発熱・発疹性疾患、特に風疹などの疾患も麻疹と同様の対応が必要だ。しかし、麻疹と風疹などでは、医学的・行政的対応も異なるため、これらの鑑別診断は非常に重要であり、今後麻疹を含む発熱・発疹性疾患の正確な診断には、遺伝子検査によるウイルス学的検査を行うべきだ」と、述べている。
▼関連リンク
・日本医療研究開発機構(AMED) プレスリリース