今回の事案は、係長級の職員がPMDAの就職前に立ち上げた翻訳会社で、製薬企業から依頼を受けた文書や医学系論文の翻訳業務をPMDAの勤務時間中に有料で行うなど、不適切な兼業を行っていたことから、同職員を先月28日付で懲戒解雇処分したもの。同事案の発生を踏まえ、PMDAは不適切な兼業の再発防止に関する施策をまとめ、公表した。
具体的には、新任者研修と全役職員必修のリスク管理研修において、今回の事案を題材に、兼業の制限と利害関係企業との関係を厳しく律すべきことを周知徹底することとした。
来月中には、顧問弁護士とPMDA幹部が課長級以上の役職員を対象に、連続した欠勤など勤務状況に問題がある職員への対処法や経営幹部に対する早期報告といった組織的対応の重要性に関する研修を2回実施する。また、PMDA内の4チームが就業上のルール、システム面での対応を検討し、5月末までに結論を出した上で、規則の整備などを進める。
近藤理事長は、「薬事規制を担う機関としての信用を著しく失墜しかねず、本人の意思で行われた事案であることを大変重く受け止めており、国民に謹んでお詫び申し上げる」と謝罪。その上で、「審査・安全・救済のセーフティトライアングルの真ん中に常に国民が存在することを役職員に強く認識させ、再発防止に取り組んでいく」との考えを示した。
一方、今年1月に製薬企業の担当者数名の氏名などの個人情報が記載された「安全性定期報告」を1冊紛失したことが判明した事案について、PMDAは文書管理に関する強化策も公表した。
強化策では、文書紛失を防ぎ、トレーサビリティを確保するため、外部からの重要文書の受け取りや、各部室間における機密文書の受け渡しに関するルールを定めることとした。
機密文書を保管する際には、いつでも所在を確認できるように整理することや新薬審査では申請者・相談者に審査員用の資料を紙媒体で提出することを求めないように、専門協議に参加する専門委員用の資料も電子媒体で受け渡しできないか検討することなどを盛り込んだ。