ヒト腸内フローラの優勢菌群「B. longum subsp. longum」
株式会社ヤクルト本社は3月25日、ベルギーにある子会社、非営利法人ヤクルト本社ヨーロッパ研究所において、特定のビフィズス菌(Bifidobacterium longum subsp. longum)が乳児期から幼児期の間、腸内に長期定着していることを確認したと発表した。研究結果は、生物学総合誌「BMC Microbiology」に掲載されている。
画像はリリースより
ビフィズス菌の一種である、B. longum subsp. longumは、出生直後の乳児から老人まで、幅広い年齢層において、ヒト腸内フローラの優勢菌群として検出されることが知られている。また、同菌株が、母親の腸内および母乳から乳児腸内に伝播することも報告されている。一方で、乳児期に腸内に定着した同菌株が、長期に渡って腸内に定着し続けるかは不明だった。
生後初期にヒト腸管に定着し、成長過程において影響を及ぼし続ける可能性
研究グループは、同一の被験者を乳児期から幼児期まで追跡調査し、乳児期に被験者の腸内に定着したB. longum subsp. longumの菌株が、幼児期まで定着し続けているかを検証。また、母子伝播と長期定着の関係を調べるため、被験者の母親の出産前の糞便および出産後の母乳から分離したこの菌種の菌株についても、同様の検証を行った。
ベルギーで出生した12名を対象に、胎便、出生後3日、7日、30日、90日、卒乳後(140±20日)、180日および約6歳時に採取された糞便をサンプルとし、さらに、被験者の母親から出産前に採取された糞便(計2回)、および出産後7日、30日に採取された母乳もサンプルとした。これらのサンプルから分離されたB. longum subsp. longum菌株について、遺伝子タイピング(MLST)に基づく菌株識別を実施。さらに、長期定着菌株が分離された被験者を対象として、乳児期および幼児期における腸内のビフィズス菌構成を、定量的PCRを用いて調べた。
その結果、「乳児期から幼児期までの間、腸内に定着し続ける菌株(長期定着菌株)が存在する」「調査した乳児の中には腸内に母親と共通の菌株が存在し、その菌株が長期定着するケースもある」「長期定着菌株は、他のビフィズス菌と共存しながら腸内に定着し続ける」ということが、明らかとなった。
これらの知見は、乳児から老人まで、幅広い年齢層において腸内で検出されるB. longum subsp. longumが、生後初期にヒト腸管に定着し、その後の成長過程において生理的な影響を及ぼし続ける可能性があることを示している。今後、ヒトとビフィズス菌との共生に関する研究のさらなる進展により、ビフィズス菌が腸管に長期定着することの意義や定着に影響を及ぼす因子が見出され、人々の健康にどのような関わりをもつのか、解明されていくことが期待される。
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