FH患者の末梢血から、遺伝子修正したiPS細胞を作製
金沢大学は3月20日、ゲノム編集技術を用いて、難治性疾患である家族性高コレステロール血症(FH:Familial Hypercholesterolemia)患者の末梢血から遺伝子修正したiPS細胞を作製することに、国内で初めて成功したと発表した。この研究は、同大医薬保健研究域医学系循環器内科学の川尻剛照准教授、附属病院救急部の岡田寛史特任助教、附属病院循環器内科の中西千明助教らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
FHは、早発性の冠動脈疾患など重篤な動脈硬化を引き起こす遺伝性の疾患で、コレステロールの細胞内取り込みに関連するLDL受容体の欠損または機能低下が原因であると知られている。両親からLDL受容体の遺伝子異常を受け継いだホモ接合体性家族性高コレステロール血症の重症患者は、幼少期から重篤な動脈硬化をきたすことがあり、心臓突然死する症例も存在する。また、薬物治療のみでは治療が不十分であり、終生に渡りLDLアフェレーシスといった侵襲的治療が必要となる。これは血液を体外へ出し、血球成分と血漿成分を分離し、血漿成分に含まれるLDLなどのアポB含有リポタンパクを取り除いた後、再び体内に戻す治療法で、肉体的、時間的、経済的にも負担が大きい。
LDLコレステロール取り込み能が改善、患者の末梢血単核球による免疫反応観察されず
研究グループは、ホモ接合体性の変異を持つFH患者の末梢血からiPS細胞を樹立し、CRISPR/Cas9システムという汎用性の高いゲノム編集法を用いて、国内では初めてLDL受容体遺伝子が修正されたiPS細胞を作製することに成功。さらに、この細胞から誘導した肝細胞は、LDLコレステロールの取り込み能が改善しているだけではなく、患者の末梢血単核球による免疫反応が観察されなかった。
今回の研究成果は、細胞移植治療といった根治治療に繋がる基礎研究として、多大な影響を持つと考えられる。研究グループは、「さらに、疾患特異的iPS細胞による疾患モデルの構築により、新たな脂質代謝改善薬の創薬スクリーニングに用いることのできる新しい評価ツールとなり得ることも期待される」と、述べている。
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