あいさつした新会頭の高倉氏は「歴代の会頭の努力で築き上げられてきた日本薬学会のプレゼンスをさらに高めるべく努力したい」と強調。「今の日本のサイエンスは薬学も含めて明るいとは言い難いのが現状。将来を支える若い研究者の元気が出るような研究環境作りが大事だと思う」と述べ、日本薬学会としても奨学金事業や各賞の表彰などを通じて「若手の支援に、より一層取り組んでいきたい」と語った。
総会では18年度決算が決議されたほか、報告事項として19年度の事業計画、予算が示された。19年度は引き続き、▽学術研究・教育活動の推進▽学会情報の配信▽他機関との交流協力とグローバル化の推進▽学会基盤の整備・確立――を主な柱として事業を展開する。
各専門領域別の10部会、地域別の8部会を縦糸、横糸として連動させながら、それぞれの活動を活性化させて、薬学研究の高度化や次世代の人材育成、地域に密着した事業展開を推進する。次世代を担う若手研究者の育成として、4年制博士課程・博士後期課程への進学者を対象に奨学金を支給する「長井記念薬学研究奨励支援事業」は19年度も継続する。
学会活動の核となる学術3誌の発行継続と活性化、国際化の推進にも引き続き力を入れる。23年に開かれる国際薬学連合(FIP)主催の「ファーマシューティカル・サイエンス世界会議」(PSWC)の日本招致活動も展開する。
19年度予算の経常収益は10億9030万円、経常費用は10億5278万円。
総会では、19年度予算に併せて、テナントからの家賃収入が日本薬学会の財政を支えているビル「長井記念館」の将来展望も示された。財政担当理事の石井伊都子氏は「今後、長井記念館の建て替え計画を考えなければならない。理事会で具体的に話し合っているわけでもなく、まだ影も形もないが、少しだけ頭の片隅に置いていただきたい」と言及。竣工から60年後の51年に建て替えるとすると「あと20年ほどで65億円以上の貯蓄が必要となる」とし、将来の建て替え計画の必要性を訴えた。
総会ではこのほか、長野哲雄氏、本庶佑氏を名誉会員として推薦することを承認。総会後は薬学会賞、学術貢献賞、学術振興賞、奨励賞など各賞の授与式が行われた。