■厚労省検討会議
厚生労働省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」は14日、過敏性腸症候群(IBS)改善薬「ポリカルボフィルカルシウム」のスイッチ化の妥当性を審議し、効能・効果に「以前に医師の診断・治療を受けた人に限る」を書き込むことでスイッチ化を「可」と結論づけた。効能・効果の書きぶりについて、第1類医薬品として販売されている「セレキノンS」に合わせ、「IBS」「以前に医師の診断・治療を受けた人に限る」を記載するかが焦点となったが、医師委員などから「まずは医療機関を受診した方が良い」といった意見が出たため、医療機関でIBSと診断された患者の服用を前提にスイッチ化を「可」とすることで意見集約した。
日本消化器病学会や日本臨床内科医会、日本OTC医薬品協会は、「過敏性腸症候群の治療薬として、長年にわたり広く臨床において使用されており、重大な副作用は認められていない」「過敏性腸症候群下痢型、便秘型、下痢便秘混合型のいずれにおいても効果を呈する」「医療用医薬品の使用実績から有効性と安全性が十分に確認されている」などを理由に、いずれも「可」との見解を示した。
第1類薬の「セレキノンS」は、「過敏性腸症候群の次の諸症状の緩和:腹痛または腹部不快感を伴い、繰り返しまたは交互にあらわれる下痢および便秘(以前に医師の診断・治療を受けた人に限る)」を効能・効果としている。
今回、スイッチ化の要望が出た「ポリカルボフィルカルシウム」に関しては、「下痢、便秘、下痢・便秘の繰り返し」を効能・効果とすることを求めており、「IBS」や「医師の診断・治療」などの記載がないものの、日本消化器病学会はスイッチ化に当たっての留意事項として、「止痢薬や便秘薬とは異なるため、どのような症状のときに服用すべきか分かりやすく記載した方が良い」と指摘していた。
長島公之委員(日本医師会常任理事)は、長期間の服用を避けるためにも、「医師の診断と治療を受けてIBSと分かった人が症状の緩和を目的に使い、それでも症状を繰り返す場合は医療機関を受診する方が安全」と主張。他の委員からも、医師の診断を受けずに服用した場合、長期連用につながるという「困った事態が起こるのではないか」などの意見が出た。
ただ、日本OTC医薬品協会の資料によると、国内のIBS有病率は約13%で、罹患者数は1200万人とされるが、医療機関受診率は約7%にとどまっている。こうしたデータや、患者のための薬局ビジョンなどで薬剤師の果たす役割が大きく変わっていることを踏まえ、笠貫宏座長(早稲田大学特命教授、医療レギュラトリーサイエンス研究所顧問)は、「OTC化を前提」とし、「効能・効果の部分について改めて整理したい」と提案。
乾英夫委員(日本薬剤師会副会長)は、服用しても症状が緩和しない場合に、医療機関の受診につなげるきっかけにもなるとして、「再発でなくてもいいのではないか」と主張したが、他の委員の意見を受け「以前に医師の診断・治療を受けた人」に限定すべきかどうかについては「非常に悩ましい」とし、条件を付けることに賛同した。厚労省は今後、ポリカルボフィルについてパブリックコメント募集の手続きを進める。
この日の会議では昨年12月の前回会合でスイッチ化「不可」と判断したアルツハイマー型認知症薬4成分(ドネペジル塩酸塩、ガランタミン臭化水素酸塩、メマンチン塩酸塩、リバスチグミン)、スイッチ化「可」と判断した消化管運動改善薬「イトプリド塩酸塩」について、パブコメ結果を踏まえた審議も行ったが、結論は変わらなかった。