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胃酸発電で動作する錠剤サイズの「飲む体温計」、動物適用実験に成功-東北大

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2019年03月15日 PM01:00

真の基礎体温や体内時計を日常的に測定、病気の早期発見や健康増進に

東北大学は3月13日、胃酸発電で動作する錠剤サイズの「飲む体温計」を開発し、動物適用実験に成功したと発表した。この研究は、同大イノベーション戦略推進センターの中村力特任教授、マイクロシステム融合研究開発センターの宮口裕助手、工学研究科の吉田慎哉特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、2019年3月に開催の「2019 IEEE 1st Global Conference on Life Sciences and Technologies(LifeTech)」で発表された。


画像はリリースより

睡眠中の基礎体温、深部体温やそのリズム()は、健康状態を把握するための重要な指標の1つ。例えば、うつ病患者は睡眠時の深部体温が、健康な人と比較して高いことが報告されている。また、深部体温リズムは体内時計の指標のひとつで、睡眠覚醒リズムや社会的時間とずれると、睡眠障害などさまざまな疾病リスクを上昇させる。そのため、これらを日常的にモニタリングできれば、病気の早期診断や健康増進につながると考えられている。しかし、一般的な体温計でこれらを正確に測定することは非常に困難だ。

体表温度計は、環境温度や皮膚との接触状態により、測定誤差が生じる場合がある。また、温度センサを肛門に挿して直腸温を測定する方法は正確かつ比較的容易に深部体温を測定できるが、センサ挿入時に誤って腸壁を傷つける恐れがあり、日常的に行うことは難しい。

イヌでの適用実験で体内温度の測定に成功、24時間以内に体外排出

研究グループは、胃酸発電でエネルギーを獲得する「飲む体温計」を開発。今回、試作した錠剤型センサの外形寸法は直径が約9mm、厚み約7mmのもの。胃酸電池の電極となるMg(マグネシウム)とPt(プラチナ)金属板以外は樹脂に覆われており、樹脂内部には温度センサ、マイコン、カスタム集積回路、通信用コイル、積層セラミックコンデンサーなどが実装されている。

センサが飲み込まれ、胃酸電池電極部に胃酸が接触すると、レモン電池と同様の原理で発電し、センサが胃を通過する前に発電エネルギーで昇圧回路を動かして高い電圧でコンデンサーに充電。この充電エネルギーを用いることで、例えば30分に1回程度の頻度で腸内温度を測定し、体外の受信器へデータを送信することなどが可能となる。体外への通信は、体内吸収の極めて少ない約10MHzの周波数帯での近距離磁気誘導方式を採用。このセンサは、通常であれば24時間以内に体外に排出され、下水処理場での沈殿工程で回収、廃棄されることを想定している。

今回の動物適用実験では、試作したセンサをイヌに服用させて胃の中に滞在させ、センサシステムの動作を検証。その結果、市販のループアンテナを用いることで、イヌの体内温度の測定に成功した。また、実験に使用されたセンサは滞留することなく、翌日に自然に体外排出された。また、体内のセンサと外部アンテナは50cm離しても、十分に通信可能だった。今後は受信器を改良することで、さらに通信距離を延ばすことが可能と考えられる。

この体温計の受信アンテナをベッド付近に内蔵しておき、ユーザーが就寝前にセンサを服用しておけば、就寝中の深部体温データを収集することが可能だ。これによって真の基礎体温や体内時計の位相のずれなどを容易かつさりげなく測定できるようになる。運動中のデータ収集にはベルトや腕時計タイプの受信器を用いることを想定しているという。将来的には、個人が日常的に利用できるよう、安価な部品や実装技術を用いて、原価を100円以下に抑えることを目標としている。今後はヒトへの適用試験を目指し、システムの最適化と動物実験を重ねていく予定とのこと。

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