治療選択肢がごく限られる汎発性膿疱性乾癬に
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は3月12日、同社が開発中の新規化合物「BI 655130」を単体投与することにより、希少難治性の乾癬である汎発性膿疱性乾癬(GPP)の症状を迅速に改善したことを示す、第1相臨床試験のデータを公表した。同データは、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(NEJM)」に掲載されたもの。また、2019年3月にワシントンDCで開催された米国皮膚科学会(AAD)の年次総会でも発表されている。
BI 655130は、免疫系の中で多くの炎症性疾患に関与している可能性があるインターロイキン36の受容体(IL-36R)の作用を阻害するモノクロナール抗体。現在、臨床開発段階で、医薬品として製造販売承認されておらず、その安全性と有効性はまだ確立されていない。
希少難治性の皮膚疾患であるGPPは、一般的な尋常性乾癬とは異なる慢性疾患。肌が赤くなり、非感染性の膿が溜まった水疱(膿疱)が多数発生し、全身の広範囲に及ぶ。また、突然の発熱、寒気、痛みを伴う皮膚病変が起こる。さらに、致死的な臓器不全や感染性合併症を伴う可能性があるため、医療上緊急の処置が必要とされている。しかし、同疾患に対して利用可能な治療選択肢はごく限られており、それらも有効性や持続性が不十分。そのため、迅速かつ強力で有効性が持続する新しい治療オプションの開発が必要とされている。
IL-36作用阻害で皮膚症状が改善
今回発表された臨床データでは、BI 655130によって中等症から重症の汎発性膿疱性乾癬の患者で急性期症状を示す患者7人の症状の改善が示された。すなわち、20週間にわたる第1相臨床試験において、単回投与後1週目以内の時点で7人中5人の患者で皮膚症状の改善を認め、4週目以降ではすべての患者において皮膚症状が改善したという。皮膚症状の平均的改善は、4週目の時点で80%に近く、試験終了時(20週目)まで維持された。
今回の試験は、新規治療アプローチ候補として長く待ち望まれていたIL-36作用阻害の肯定的効果に関する臨床データをもたらしたもの。BI 655130を1回投与するだけで患者に短期間で改善が見られたことは、GPPに対する将来の大きな治療可能性を示すものとして、今後の開発に期待が寄せられる。さらに同剤は、現在、複数の炎症性疾患の治療薬として研究が進められており、皮膚疾患である掌蹠膿疱症、腸を冒す炎症性疾患である潰瘍性大腸炎など、他の免疫関連疾患を対象とする試験も進行中。
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・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース