皮膚科専門医でも診断が難しい悪性黒色腫
東北大学は3月7日、悪性黒色腫11例において、より早期かつ簡便に皮膚がんの進行度を、熱伝導率で判定することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科皮膚科学分野の相場節也教授、東北大学病院皮膚科の藤村卓講師、弘前大学大学院理工学研究科の岡部孝裕助教、八戸工業高等専門学校の圓山重直校長らの研究グループによるもの。研究成果は「Scientific Reports」に掲載されている。
画像はリリースより
悪性黒色腫は進行すると命に関わる皮膚がんで、国内でも毎年600~700人が死亡している。がん細胞が血管やリンパ管を豊富に持つ「真皮」に進行した早期真皮湿潤がんでは、リンパ節や他の臓器に転移する可能性があり、転移の有無を、早期に検査する必要がある。
現在は手術前に、がんを外科的に切除する試験採取を行い、真皮に進行しているかを判断しているが、その診断が確定するまでに2~3週間の期間を要する。また、皮膚がんの初診時診断は、主にダーモスコピーを用いた視診により行われるが、皮膚科専門医であっても苦慮することがあり、悪性腫瘍の発見が遅れることもあるというのが現状だ。
表皮内がんと早期真皮浸潤がんとで真逆の熱伝導率
近年、悪性腫瘍と健常組織では熱伝導率が異なることが示唆されている。そこで研究グループは、精密な温度測定において広く用いられているサーミスタという機器を応用し、非侵襲的に皮膚表面温度を測定する技術を開発した。
同機器を用いて、皮膚がんと隣接する健常組織との熱伝導率の差を数値化し、診断の指標とすることで、皮膚がんの良性・悪性を判定。この判定を悪性黒色腫11例において試みたところ、表皮内がんと早期真皮浸潤がんとで、真逆の熱伝導率を示すことが明らかになった。
研究グループは今後、悪性黒色腫においてのがんの転移の有無を調べるために実施する手術前の全身検査や、リンパ節転移を判定する検査であるセンチネルリンパ節生検の必要性を判断するために有用な検査機器となるよう、開発を進めていく予定。
研究グループは、「本機器の開発が進めば、皮膚科専門医でなくても悪性黒色腫の進行度を迅速かつ簡便に判定することが可能となるため、迅速に最適な治療を開始できるようになり、多くの皮膚がん患者のQOL向上に寄与することが期待できる」と、述べている。
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・東北大学 プレスリリース