尿酸値を低下させることで予後を検討した前向き試験で
国立循環器病研究センターは3月8日、高尿酸血症患者を対象としたフェブキソスタット製剤による脳心腎血管関連イベント発現抑制効果に関する試験を行い、フェブキソスタットによる尿酸値の低下が高尿酸血症を有する高齢患者の予後を改善できること、特に慢性腎臓病の発症や進展予防が期待できることを見出したと発表した。この研究は、川崎医科大学の小島淳主任教授、熊本大学の松井邦彦医学部附属病院地域医療支援センター長、国循の小川久雄理事長らの多施設共同研究グループによるもの。研究の成果は、専門誌「European Heart Journal」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
フェブキソスタットは、日本で発見された高尿酸血症治療薬として臨床試験を経て、2011年に承認された。これまで尿酸値を低下させることで予後を検討した前向き試験は世界的にほとんどなかったので、フェブキソスタットを投与することで、脳心腎血管関連イベント発現の抑制効果を検討するために行われたのが今回の試験だ。
脳心腎血管関連イベント抑制を世界で初めて証明
この試験は、全国141施設が参加した高尿酸血症患者を対象としたフェブキソスタット製剤による脳心腎血管関連イベント発現抑制効果に関する多施設共同ランダム化比較試験(Febuxostat for cerebral and caRdiovascular events prEvEntion stuDy:FREED)。2013年4月から開始し、4年間遂行した。対象は、脳心腎血管リスクを有する高尿酸血症の65歳以上の高齢患者。登録後ランダム化を行い3年間経過観察した。最終的にはフェブキソスタットを投与した537例(フェブキソスタット群)と、フェブキソスタットを投与しなかった533例(非フェブキソスタット群)の2群間で比較検討を行った。
ベースラインの尿酸値は2群間で差はなかったが、試験終了時にはそれぞれフェブキソスタット群4.50±1.52 mg/dL、非フェブキソスタット群6.76±1.45 mg/dLで、フェブキソスタット群で尿酸値が明らかに低下。主要複合評価項目(総死亡、脳血管疾患、非致死性冠動脈疾患、入院を要する心不全、治療を要する動脈硬化性疾患、腎障害、心房細動発症の複合)は、フェブキソスタット群で23.3%であったのに対し、非フェブキソスタット群で28.7%とイベント発生率はフェブキソスタット群で低値だった(ハザード比=0.750)。主要複合評価項目の個々の要素では腎障害の発生を明らかに抑制したという(16.2% vs 20.5%)。
結論として、フェブキソスタットによる尿酸値の低下は、高尿酸血症を有する高齢患者において、脳心腎血管関連イベントを減少させることができ、中でも慢性腎臓病の発症や進展予防が期待できると考察された。今回の研究は、フェブキソスタットが痛風などの尿酸塩沈着症を予防するのみならず、脳心腎血管関連イベント抑制を証明できた世界初の研究で、今後の内科や循環器診療に寄与することが大いに期待されると研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース