新しいカリキュラムの名称は「創薬科学副専攻」。基礎研究から製剤技術、薬事承認まで学習する「創薬概論」、学内の各研究室で行われる「創薬科学実習」など新規5科目を開講する。そこに、理学や農学、獣医学など各学部が持つ創薬関連科目を加えて、体系的に学べる教育課程として再構成する。20年度に入学した全学部の学生を対象に希望を募る。1学年あたり25人程度の履修を見込んでいる。
創薬科学副専攻の開設を主導する特命副学長の藤井郁雄氏は「薬事承認や治験といった創薬の出口までを理解した上で、戦略的に基礎研究のテーマを考えられる人材を育てたい」と意気込む。
副専攻開設の背景にはバイオ医薬品市場の拡大がある。同大学は17年度、外部研究資金の3割弱に該当する約6億円を生命科学分野で獲得。中分子医薬やドラッグデリバリーシステム、疾患モデル動物など、バイオ医薬品を軸に創薬研究に取り組んできた。その領域の教育を強化し、創薬研究者を輩出したい考えだ。
大阪府立大の創薬研究は、低分子医薬品を得意とする薬学部と差別化を図ることができるという。藤井氏は「薬学部や薬学科がないため社会から十分に認知されていないが、環境は整っている。副専攻の開設は、大阪府立大学の創薬研究を印象づける一歩になるのではないか」と力を込める。
学内の研究力にも好影響があると見ている。創薬を学んだ学生が研究室に進むことで、研究力の底上げが見込まれる。学部で創薬の基礎を身につけて、大学院の研究に応用してほしいという。また、学部の垣根を越えて横断的な副専攻を開設したことで、研究室間の連携が強まるとの期待もある。
同大学は、幅広い領域で学生に学んでもらおうと、12年度に「学部制」から「学域制」に変更した。副専攻制度はその一環。理学や工学、獣医学といった専攻分野を履修しながら、創薬の視点を兼ね備える人材は需要があると見込んでいる。