経皮感作は食物アレルギーの発症原因に
国立成育医療研究センターは3月5日、エコチル調査パイロット調査に参加している子どもの寝具の埃を掃除機で吸い取り、埃中のチリダニアレルゲン、鶏卵アレルゲンの量を調べた結果、100%の子どもの寝具の埃から鶏卵アレルゲンが検出され、それらは全てダニアレルゲン量よりも高濃度だったと発表した。この研究は、同センター研究所エコチル調査研究部の大矢幸弘代表(アレルギーセンター長・エコチル調査メディカルサポートセンター長)、北沢博医師(現在、東北医科薬科大学小児科勤務)、エコチル調査コアセンター(国立環境研究所)、エコチル調査パイロットユニットセンター(熊本大学、九州大学、産業医科大学、自治医科大学)らのグループによるもの。研究成果は「Allergology International」に同日付で掲載された。
画像はリリースより
湿疹のある乳児は、鶏卵を食べたことがなくても離乳食開始前から鶏卵に対するIgE抗体を作っていることが一般的に認められている。これは、湿疹によりバリア機能が低下した皮膚から環境中の鶏卵アレルゲンが入り、経皮感作(IgE抗体産生)を引き起こし、鶏卵アレルギーを発症しているためと考えられている。経皮感作は食物アレルギーの発症原因として重要視されている。研究グループは以前、成育コホート研究で、乳児期早期に湿疹があると食物アレルギーのリスクが高まることを報告している。今回の研究は、子どもたちの家庭環境の寝具に、日本で小児期の食物アレルギーの原因として最も多い鶏卵アレルゲンがどのくらい存在するのかを評価することを目的として行われた。
過半数で鶏卵アレルゲンがダニアレルゲンの2倍以上
環境省が実施している「子供の健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のパイロット調査が全国の4施設(自治医科大学、九州大学、産業医科大学、熊本大学)で行われている。今回の研究は、このパイロット調査に参加している子どもの中で、3歳の時点で家庭訪問による調査に協力が得られた約90件の家庭を対象とした。子どもが使用している寝具に掃除機をかけて埃を収集し、埃中の鶏卵アレルゲン量を測定。また、同じ埃から同時測定したチリダニアレルゲン量と比較を行った。測定はELISA法(測定上限は60µg/g)を用い、鶏卵タンパク質はオボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイドの合算値、チリダニタンパク質はコナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニの糞由来のアレルゲンであるDerf1、Derp1の合算値とした。
その結果、鶏卵アレルゲンは測定したサンプル全てで検出され、鶏卵タンパク質の中央値は43.7µg/gdust(0.9~60µg/g)だった。一方チリダニタンパク質の中央値は7.8µg/gdust(0.1~60µg/g)で、全てのサンプルにおいて鶏卵アレルゲン濃度はダニアレルゲン濃度よりも高値だった。59%のサンプルで鶏卵アレルゲン量はダニアレルゲン量の2倍以上、25%のサンプルで10倍以上だった。
今回の研究結果は、家庭内での鶏卵アレルゲンの拡散の機序の解明や、環境中食物アレルゲン量と食物アレルギー発症の関連などについての研究課題につながると研究グループは見ている。
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・国立成育医療研究センター プレスリリース