腎臓に多数の膿胞が発生する遺伝病ADPKD
サノフィ株式会社のスペシャルティケア事業部門のサノフィジェンザイムは3月4日、現在開発中の経口薬ベングルスタット(venglustat)において、急速に進行するリスクを有する常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の患者を対象とした第2/3相臨床試験(STAGED-PKD試験)を、日本で開始したと発表した。
ADPKDは、腎臓に多数の嚢胞が発生する希少な遺伝性腎疾患で、PKD1遺伝子またはPKD2遺伝子の変異により発症する。患者頻度は3,000~8,000人に1人と推計され、患者の約半数は末期腎不全に至り、透析や腎移植が必要となる。現在ADPKDの治療にはバソプレシンV2受容体拮抗薬が用いられており、それ以外の治療は降圧療法や疼痛に対する対症療法が中心になっている。
腎膿胞の成長を抑える狙いの薬
ADPKDでは、腎臓にスフィンゴ糖脂質と呼ばれる物質が蓄積することが知られており、その蓄積は、嚢胞の成長を促す重要な要因と考えられている。Venglustatは、グルコシルセラミド合成酵素(GCS)阻害剤で、グルコシルセラミド(GL-1)、またはコアにGL-1を持つスフィンゴ糖脂質の蓄積に関連するさまざまな疾患に対して現在開発中の経口薬。遺伝子操作によりADPKDを発症させたモデルマウスの実験では、GCS阻害剤の投与によりスフィンゴ糖脂質の産生を阻害すると、腎嚢胞の成長速度が低下することが明らかにされている。
STAGED-PKD試験は、ADPKDの患者に対するvenglustatの有効性と安全性等について評価することを目的とした二重盲検無作為化多施設共同試験。同試験の主要評価項目は、ベースラインから投与後18か月までの総腎容積の変化率と、投与後24か月までのeGFR(推算糸球体濾過率)の変化率。
なお、venglustatは米国においてADPKDの治療薬としてオーファンドラッグの指定を受けている。同剤の臨床試験は、日本、米国、カナダ、中国およびEUの数か国の医療施設において実施する予定。
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