医薬品医療機器総合機構(PMDA)は1日、係長級の職員が製薬企業等との利害関係のある不適切な兼業を行っていたとして、2月28日付で懲戒解雇したことを明らかにした。2004年の設立以降、職員の懲戒解雇処分は初めてで、昨年10月頃から勤務時間中に翻訳業務などを有料で行っていた。申請企業に関する情報漏洩は確認されておらず、PMDAは再発防止策として、就業規則の見直しや問題行動が見られる職員の通報窓口設置などを検討している。
今回の事案は、17年9月から昨年12月にかけて、国際部門に所属する係長級職員の勤務態度が不良であり、業務に支障が見られたことから、態度改善に向けた指導を実施。その際、パソコンやメール内容などを確認したところ、不適切な兼業が発覚したもの。
この職員が16年度にPMDAへの就職前に立ち上げた翻訳会社で、製薬企業から依頼を受けた文書や医学系論文の翻訳業務を有料で行っていた。昨秋以降、医薬品医療機器法上の製造販売業許可を持つ企業1社、製薬企業にコンサルティングを行う企業2社と業務受託契約を結んでいたほか、コンサルティング企業1社と業務受託に向けた交渉を進めていた。昨年10月頃から、勤務時間中にPMDAのパソコンで翻訳作業や業務受託契約の締結に関する協議を複数回行っていた。また、業務受託契約の際に受託元に提出した履歴書やメールの署名欄では、PMDAでの肩書を詐称していた。
一方、使用していたパソコンやメールを確認した結果、申請企業などの企業秘密に関する情報を外部に漏洩した事実は確認されていない。企業秘密の提供を求められた役職員もおらず、本人も情報漏洩を否定している。
PMDAは、製薬企業等との利害関係が生じる兼業を禁じており、今回の事案が重大で早急な処分が必要と判断。先月28日付で同職員を懲戒解雇した。
再発防止のため、就業規則などの見直しを行うほか、職員が企業の一員として医薬品開発のコンサルタント業務に就けないことを関係団体に周知すること、職員に問題行動があった場合の通報窓口を設ける。
今回の事案を受け、PMDAは、「このような事案が二度と発生することがないよう、組織を挙げて綱紀粛正と再発防止に向けた取り組みを進め、国民から信頼される公正な業務運営に努める」との考えを示している。