■パブコメ経て年内に論文発表
日本集中治療医学会は「集中治療室(ICU)における薬剤師の行動指針」案を策定した。ICUの担当薬剤師が目標とする行動を「治療、薬物療法」「医療安全」など11項目に分けて示したもの。ICUで業務を担当する薬剤師が増える中、行動指針を参考に業務のあり方を各病院で改めて考えてもらうことで、業務の標準化を目指す。チーム医療の一員として今まで以上に薬剤師が貢献できるようにしたい考え。今後、パブリックコメント募集を経て行動指針を正式に策定し、年内をメドに論文として発表する計画だ。
1980年代からICUでの薬剤師の業務が始まった米国では2000年に、米国集中治療医学会と米国臨床薬学会が共同で、薬剤師の行動指針である“ポジションペーパー”を策定した。日本でも近年は、病棟薬剤業務実施加算2の新設など診療報酬上の後押しもあって、ICUでの薬剤師の業務や常駐が広がっている。こうした背景から同学会の中に「集中治療における薬剤師のあり方検討委員会」が16年に発足。米国の取り組みを参考に数年かけて行動指針の策定を進めてきた。
3日、京都市で開かれた同学会学術集会で行動指針案が発表された。同委員会の前田幹広氏(聖マリアンナ医科大学病院薬剤部)は、「日本でも多くの薬剤師がICUで働いており、業務が多様化している。試行錯誤しながら、今後どういう方向性で業務を拡大していけばいいのか悩んでいる薬剤師は少なくない」と指摘。「指針の内容は、絶対にすべき必須事項ではない」とした上で、行動指針の正式策定後は「自分が今、何ができていて、何ができていないのかを確認してほしい」と述べ、参考としての活用を求めた。
行動指針案は、ICUの担当薬剤師が目標とする行動を11項目に分けて定めたもの。その内訳は、▽治療、薬物療法▽薬剤に関する有害事象や過誤への対応▽説明と同意▽記録▽医療安全▽感染管理▽チーム医療▽資格▽教育▽研究▽その他――となっている。
治療、薬物療法の項目では、「回診やカンファレンスに参加し、患者の状況を把握すると共に薬物療法について協議する」ことや、薬物療法への積極的な関与として「患者情報の把握と薬物療法への介入」「薬物療法の評価」「費用対効果」「ICU転出時の情報提供」などの業務を目標として示した。
説明と同意については、「医師と協働して患者や家族に説明する」、「インフォームドコンセントにおいて医師による治療の説明を補助する」などの業務を提示。医療安全の項目では、「薬剤師は、薬剤に関する過誤や有害事象を予防および軽減するために、薬剤の処方設計からモニタリングに至るまでのプロセスの改善に努める」としたほか、適応外使用時の院内委員会との連携推進を求めた。
また、感染管理における他チームとの連携、後任の育成や多職種・学生への教育、一般市民への啓蒙、ICUにおける臨床研究などを推進する役割も行動指針案に盛り込まれた。
行動指針の正式策定後は、各病院での活用が求められる。行動指針を参考に、できている業務とそうでない業務が目に見える形になり、それを自施設の業務改善につなげることができるかが重要なポイントになるとしている。