鼻茸を伴う重症慢性副鼻腔炎患者が対象
仏サノフィ社および米Regeneron社は2月25日、「デュピクセント(R)(デュピルマブ)」について、2つの第3相試験SINUS-24およびSINUS-52(日本参加)における良好な結果が発表され、手術および/またはステロイド全身投与による治療が奏功しなかった鼻茸を伴う重症の再発性慢性副鼻腔炎の患者において、標準的治療薬である鼻噴霧用ステロイド薬による基礎治療下で、鼻茸の大きさ、鼻閉の重症度、慢性的な副鼻腔の症状、嗅覚、併存症である喘息に関する評価項目の改善と、全身ステロイド薬の使用および鼻/副鼻腔手術回数の低下をもたらすことが示されたと発表した。これらのデータは、米国・サンフランシスコで開催された米国アレルギー喘息・免疫学会(AAAAI 2019)のレイト・ブレイキング・セッションで発表された。
鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎は、重症アレルギー性疾患の背景にあると考えられる「2型炎症」により生じる慢性上気道疾患。副鼻腔や鼻道の閉塞をもたらす鼻茸を特徴とする。患者には、呼吸困難を伴う重度の鼻閉、鼻汁、嗅覚障害、味覚障害、顔面痛や顔面圧迫感がみられ、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎による症状が持続すると、生産性の低下や日常生活動作の制限、食事が楽しめなくなる、睡眠不足や疲労が生じるなどの複合的な影響が生じる。これまでの治療選択肢は、鼻噴霧用ステロイド薬、経口ステロイド薬や手術などに限られ、治療後の再発率も高い状況だった。
評価項目となった全ての症状を改善
デュピクセントは、2型炎症で中心的役割を果たすインターロイキン4とインターロイキン13(IL-4とIL-13)によるシグナル伝達を阻害するヒトモノクローナル抗体。第3相試験である2つの試験では、標準的治療薬である鼻噴霧用ステロイド薬のモメタゾンフランカルボン酸エステル(MFNS)による基礎治療下で、同剤300mgを投与する群(デュピクセント群)と、プラセボを投与する群(プラセボ群)を比較。主要評価項目である鼻閉重症度スコアと鼻茸スコアのベースラインから24週時点までの変化を達成した結果、デュピクセントを投与することで有意な改善がみられた。鼻閉重症度スコアは、SINUS-24試験、SINUS-52試験の順にそれぞれ治療群が58%および51%の改善だったのに対し、プラセボ群は19%と15%の改善だった。鼻茸スコアは、治療群が33%および27%の低下だったのに対し、プラセボ群7%および4%の上昇だったという。さらに同剤は、嗅覚障害、併存症としての喘息をはじめとする全ての副次評価項目も有意に改善したという。デュピクセント群における有害事象と重篤な有害事象の発現率は、プラセボ群と同程度だった。
サノフィとRegeneron社は、アレルギーやその他の2型炎症により生じるさまざまな疾患を対象とした臨床開発プログラムにおいてデュピルマブを検討中で、小児(6か月~5歳)のアトピー性皮膚炎(第2/3相)、思春期患者(12~17歳)のアトピー性皮膚炎(第3相試験が完了)、小児喘息(6~11歳)(第3相)、好酸球性食道炎(第2株式会3相)、花粉症(第2相)、ピーナツアレルギー(第2相)を対象とした開発を実施中。また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の試験も計画中とのこと。さらにデュピルマブと、IL-33を標的とするREGN3500との併用療法を検討する試験も実施中。
▼関連リンク
・サノフィ株式会社 プレスリリース