■個装箱払出しにロボット活用
梅田薬局は、JR大阪駅の南西に位置するヒルトンプラザイーストビルの5階にある。その中で鎮座する巨大なボックス状の装置には、高さが異なる30段くらいの棚が両サイドに設置され、それぞれの棚には高さに応じた医療用医薬品の個装箱が数センチ間隔で整然と並ぶ。中央部の空間をロボットアームが自在に動き回り、棚から個装箱を取り出して装置外に払い出したり、装置内の棚に個装箱を入庫したりする。
これは、小包装品を箱のまま患者に渡す箱出し調剤が主流の欧州で汎用されているベクトン・ディッキンソンの自動入庫払出装置「BD Rowaシステム」。国内では梅田薬局が初めて導入した。レセコンから処方情報を装置に送ると、ロボットアームが目的の個装箱を棚から一つずつ、それぞれ10秒前後で取り出して払い出す。薬剤師は個装箱からPTPシートなどを処方日数分だけ抜き取り、最終鑑査を経て投薬カウンターで患者に渡す。
同装置への入庫作業も容易であり、個装箱側面のGS1コードを読み取らせ装置のベルトコンベアに置くだけでよい。その箱の大きさに応じ、適切な棚の位置を装置が考えて収納する。調剤後、手元に残った医薬品も個装箱に入れたまま再び装置内に戻す。調剤時に発行されるラベルを個装箱に貼り、入庫時にそれを読み取らせることで箱内の残数を装置に記憶させて管理できる。
梅田薬局の装置には、最大約4000箱を収納できる。ほぼ全ての錠剤に加えて漢方薬の小包装、軟膏のチューブなどを装置内に収納可能で、同装置の活用は医薬品の入庫や在庫管理業務、調剤時に医薬品を探す手間などを省き、対物業務の効率化につながる。
メディカルユアーズの渡部正之社長は「対物業務の手が空いた分、薬剤師には患者とのコミュニケーションや医師とのコンサルテーションなどの対人業務、在宅医療などに力を入れられる」と強調する。
医療モール内の各診療所と薬局がEMシステムズの病診薬連携システムを導入していることも特徴。同意を得た患者については受診2回目以降、医師が電子カルテに入力した患者の処方内容や診断名、検査値などの情報を薬局薬剤師が閲覧できる。情報を得て質の高い関与が可能になるほか、院外処方箋を薬局窓口で受け取る前から調剤の準備を開始できるため、待ち時間の大幅な短縮につながる。
渡部氏は「医師と薬剤師が強固に連携した医薬協業の医療モールを都市部に作りたいと考えていた」と話す。医薬協業によって業務全体を効率化し、医療の質も高められるツールとして、自動入庫払出装置と病診薬連携システムの組み合わせに着目した。
■調剤薬受取、時間外も可‐薬局壁面に自動払出装置
また、会社員の受診が多いと見込まれる梅田薬局には、営業時間外でも調剤済み薬剤を後で患者が受け取れるシステムを導入した。処方箋応需後、まず薬剤師は鑑査や疑義照会を実施し、対面で患者への服薬指導を実施。患者にはすぐ仕事に戻ってもらう。
その上で、調剤した薬剤を箱に入れ、自動入庫払出装置で保管。仕事帰りに薬局に立ち寄った患者は、薬局壁面に設けられた「ピックアップターミナル」に引換券をかざし、自動入庫払出装置から払い出された調剤済み薬を受け取る。営業時間の午後8時を過ぎ薬局が閉まっても、ビルが空いている午後11時まで受け取りが可能だ。グレーゾーン解消制度に基づいて厚生労働省が昨年、こうした運用は法規制に抵触しないと回答。それを現場に反映させたものである。