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「日本人基準ゲノム配列」の初版JG1を作成・公開-東北大ToMMo

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2019年02月27日 AM11:45

「国際基準ゲノム」ではなく「日本人」の基準配列が必要

東北大学は2月25日、)が、日本人のゲノム解析を行うためのひな型となる基準ゲノム配列として「(JRGA)」の初版JG1を作成・公開したと発表した。JG1は、研究や臨床ゲノム解析に広く利活用できるように、既に同機構のホームページ上で公開されている。


画像はリリースより

ゲノム医療の推進のためには、正確な個人のゲノム配列の解析が重要となるが、現在は「基準となるゲノム配列」に対して、調べたい個人との差を検出する方法がよく用いられている。現在、基準となるゲノム配列として一般的に用いられているのは、「国際基準ゲノム」。これは、複数の個人に由来するとされているが、実際は、配列の70%以上がヨーロッパ系とアフリカ系が同程度に混交している祖先をもつ単一の個人に由来している。

そのため、次世代シークエンサーを用いた全ゲノム解析などに利用する際、次のような課題を含んでいる。まず、国際基準ゲノム配列には、単一の個人に由来する多くの希少なバリエーションが含まれてしまっているので、日本人での配列バリエーション検出に見落としや誤検出が生じる可能性がある(レアリファレンスアレル問題)。また、国際基準ゲノム配列は、日本人から遠い祖先性のため、民族集団固有の構造バリアントなどに起因した難読領域が存在する可能性がある。これらの問題を解決し、日本人での次世代シークエンシング解析を高精度化するためには、日本人に祖先性を持つ複数の全ゲノム配列を解読し、それを統合した日本人基準ゲノムを構築する必要があった。

出身地の異なる3名の日本人男性から作成

今回、ToMMoは、出身地域が異なる3名の日本人男性について、デノボアセンブリ(国際基準ゲノムの配列情報を利用せずに全ゲノム配列を決定)を行なった。デノボアセンブリには主に「長鎖リード技術」と「オプティカルマッピング技術」の2種類のゲノム解読技術を用いた。さらに「短鎖技術」による次世代シークエンシング解析を用いて解読エラーを除くことで、3名分の高精度な配列スキャフォールドを作成した。その上、「メイトペアライブラリー技術」を利用して解読できなかった領域を補い、3者の配列を統合した。その後3者で異なる部分は多数派の配列を採用することで、一個人に由来する配列バリエーションを取り除いた。最後に、既知の遺伝地図などの情報を用いて配列スキャフォールドとヒト染色体との対応付けを行い、日本人基準ゲノムJG1を完成させた。

構築したJG1がレアリファレンスアレル問題の解決に寄与するか検討するため、国際基準ゲノム配列とJG1を比較した。結果、国際基準ゲノム配列には日本人集団には一切見られなかった一塩基多型が24万6,464か所で観察されたのに対し、JG1ではそのうちの24万1,500か所を日本人全員に見られるアレルに置換していることがわかった。これは、JG1を利用すれば、日本人の次世代シークエンシング解析において短鎖リードの当てはめや配列バリエーション検出のエラーを劇的に減らし、より精密で正確なゲノム診断が可能となることを示唆している。一塩基多型に限らずより大きな構造バリアントについても同様に多数派への置換を行なっているため、国際基準ゲノム配列を用いた解析に存在するバイアスが解決できるという。なお、JG1は構成する3名のゲノムを複数の手法で高度に統合したものであるため、配列情報のみから個人特定ができる可能性は極めて低い。

今後、日本人の全ゲノム解析を行う際、国際基準ゲノム配列ではなくJG1をひな型として用いることにより、日本人の全ゲノム解析をこれまでより高精度に行うことが可能になるという。これにより、希少疾患の遺伝要因の究明、ToMMoが構築してきた日本人全ゲノムリファレンスパネルの精度向上、がんゲノム解析、さらには日本人特有の疾患感受性や特有の薬剤感受性に寄与するゲノム配列変化の解明などの大きな進展が期待されると研究グループは述べている。

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