多くの患者が自己管理での運動を継続
東北大学は2月20日、急性心筋梗塞患者において、発症後の運動量(身体活動量)を高く保つことが腎機能低下の抑制につながることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科内部障害学分野の佐藤聡見大学院生と上月正博教授らのグループによるもの。研究成果は「PLOS ONE」に掲載されている。
画像はリリースより
急性心筋梗塞などの虚血性心疾患を発症すると、その後の腎機能が低下しやすいことが報告されている。さらに急性心筋梗塞患者が腎機能障害を併存すると、その後の総死亡率や心血管関連死が増加することもわかっており、急性心筋梗塞患者の腎機能を維持・改善する治療法の確立は、非常に重要な課題となっている。
近年、急性心筋梗塞患者や他の心疾患患者において、外来通院型の心臓リハビリテーション(外来心リハ)に参加し、自転車エルゴメーターなどを用いた運動療法を実施することで腎機能が維持・改善することが報告されており、運動療法の腎保護効果に期待が高まっている。
しかし、日本においては通院時間や医療費などの問題から、退院後に外来心リハに通院する急性心筋梗塞患者の割合が非常に低いという現状がある。そのため多くの患者は退院時に医師や理学療法士から受けた教育をもとに、ウォーキングなどの運動を自己管理で継続し、日常生活上の身体活動量を維持・向上するという手段をとる人が多い状況となっている。そのため、急性心筋梗塞患者の日常生活上の身体活動量が腎機能に好影響をもたらすか否かの解明が重要となるが、これまで明らかにされていなかった。
1日歩数とeGFRの変化に有意な関連認める
研究グループは、急性心筋梗塞発症後の身体活動量と腎機能変化との関係性を前向きに調査。急性心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈形成術および入院中の包括的な心臓リハビリテーションを実施した患者を対象に、退院後3か月間の身体活動量の評価と血液生化学検査、尿検査、心臓超音波検査、身体機能検査の評価を行った。身体活動量の指標として、3軸加速度計内蔵の活動量計により、記録した1日歩数を評価。そして、腎機能の指標として、食事や筋肉量などの影響を受けにくい血清のシスタチンCから算出した推定糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate; eGFR)を評価した。
その結果、一日歩数とeGFRの変化に有意な関連が認められ、急性心筋梗塞患者において、発症後の身体活動量を高く保つことが腎機能低下の抑制に繋がることが判明した。
今回の研究により、急性心筋梗塞患者における日常生活上の身体活動量と腎機能変化との関係性が初めて明らかにされた。研究グループは、「本研究の結果により、急性心筋梗塞患者の腎機能を保護するための方策として身体活動量管理の臨床的意義が明らかとなり、再発予防や生命予後改善に寄与する可能性があると考えられる」と、述べている。
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