キムリアは、患者の末梢血から採取したT細胞にCD19を標的とするCARを発現させ、その細胞を点滴で静脈内に投与する新しい治療法。T細胞の採取から投与まで50日程度かかる。今回、再発・難治性CD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者を対象とした国際共同第II相試験で主要評価項目の基準に達したことから、一定の有効性が期待できると判断した。
効能・効果は、再発・難治性のCD19陽性のB-ALL、再発・難治性のCD19陽性のDLBCLだが、投与対象は限定する。
B-ALL患者には、初回患者で標準化学療法を2回以上行ったが寛解が得られない場合、再発患者で化学療法を1回以上行ったが寛解が得られない場合などのみに限る。国内の投与対象患者は約70人とされる。
DLBCL患者には、初発患者で化学療法を2回以上、再発患者で再発後に化学療法を1回以上行っても完全奏効が得られなかったか、完全奏効が得られても再発した場合などに限る。この場合、さらに自家造血幹細胞移植の適応外の人などに限る。投与対象患者は約260人。
承認条件として、緊急対応できる施設で十分な知識と経験がある医師が、高熱や関節痛を発症するサイトカイン放出症候群を管理できる体制のもとで使用することなどを求めた。希少疾病用再生医療等製品で再審査期間は10年。既に米国と欧州で承認されており、いよいよCAR-T療法が国内にも初上陸する。
■癌治癒へ新時代の幕開け‐薬価が大きな注目点に
CAR-T療法のキムリアが承認されれば、化学療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤に続き、癌の薬物療法は新たな時代の幕開けとなる。キムリアは、これまで治療成績が良くなかった再発・難治性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児対象試験において、1回投与で輸注後3カ月の寛解率82%、24カ月の無再発生存率62%と高い治療効果を示した。
CAR-T療法で癌種によっては根本治療の可能性も見えてきた。トップクラスの創薬研究者も「C型肝炎でハーボニー、ソバルディが登場したように、癌でも治癒に近づく薬剤が日本で登場してくることは非常に意味がある。インパクトは大きい」と高く評価する。
世界の製薬企業がしのぎを削る癌領域で、キムリアの登場が各社の新薬開発に好影響をもたらすとの見方もある。ブレークスルーとなる薬剤が登場すれば、他剤との併用も含め、研究が一気に活性化するのではないかとの期待だ。
キムリアは、一人ひとりの患者に合わせて製造されるため、製造コストが膨らみ、米国では約5000万円の超高額薬価となった。これを日本の患者に届けるために保険給付のあり方が待ったなしの課題となる。一定の患者でサイトカイン放出症候群などの副作用も報告されており、市販後安全対策も徹底する必要がありそうだ。