医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医薬品・医療機器 > 既存薬タウリン、ミトコンドリア病MELASに対する日本初の保険適用治療薬へ-川崎医科大

既存薬タウリン、ミトコンドリア病MELASに対する日本初の保険適用治療薬へ-川崎医科大

読了時間:約 1分45秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年02月21日 PM02:00

ミトコンドリアロイシンtRNAが障害される難病

川崎医科大学は2月19日、大正製薬株式会社と協力して行ったタウリン散98%「大正」の「MELASにおける脳卒中様発作の抑制」の効能・効果および用法・用量追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請について、2019年1月31日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において承認が了承されたと発表した。


画像はリリースより

ミトコンドリア病MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)は、ミオパチー(M)、脳症(E)、乳酸アシドーシス(LA)、および脳卒中様発作(S)を特徴する疾患で、脳卒中様発作の発症から平均16.9年で死亡する難病。MEALSの原因は、90%以上がミトコンドリアのロイシンtRNA遺伝子領域の点変異であり、この変異によってロイシンtRNAのアンチコドンに正常では存在するタウリン修飾が欠損するため、mRNAのコドン認識が障害されることが、これまでの日本人による研究で明らかとなっている。タウリンは体重の0.1%を占めるアミノ酸だが、ヒトではその生合成系が貧弱で、通常、食事から直接摂取する必要がある。

MELASに対して保険適用された日本初の治療薬に

川崎医科大学神経内科学講座の砂田芳秀教授および大澤裕講師は、同自然科学の西松伸一郎准教授、帝京科学大学理学療法学科の萩原宏毅教授らと協力し、タウリン大量療法の医師主導治験を実施している。同治験の成果としてこれまでに、MELASの脳卒中様発作の再発抑制効果を証明し、基本病態であるミトコンドリアロイシンtRNAのタウリン修飾率が増加することを発表した。

この成果をもとに、「タウリンによるMELAS脳卒中様発作再発抑制療法の実用化」を研究課題とし、厚生労働省および日本医療研究開発機構の支援のもと、砂田教授らによる医師主導治験を進めた。この治験結果に基づき、日本神経学会から要望書が厚生労働省に提出された。2017年8月「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の検討結果を受け、厚生労働省は大正製薬に、既存薬タウリン散(1987年:うっ血性心不全・高ビリルビン血症(閉塞性黄疸を除く)における肝機能の改善)の稀少難病MELASにおける脳卒中様発作の再発抑制を効能・効果とする開発要請を行った。そして2018年4月16日、「MELASにおける脳卒中様発作の抑制」の効能・効果および用法・用量追加に係る一部変更承認申請が行われ、2019年1月31日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において承認が了承された。

これまでミトコンドリア病MELASに対する保険適用されている薬剤はなく、タウリンは日本で初めて、難病であるミトコンドリア病に対する保険適用された治療薬となる予定だ。なお同剤は、希少疾病用医薬品の指定を受けている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医薬品・医療機器

  • ジョンソン・エンド・ジョンソン 肺がん領域に初参入
  • レポトレクチニブ「がん細胞が耐性を獲得しにくく、長期使用に期待」
  • 2025年1月より社長交代で新たな体制へ‐アレクシオンファーマ
  • ミリキズマブの炎症性腸疾患に対する長期持続的有効・安全性データを公開-リリー
  • 転移性尿路上皮がん、一次治療における新たな選択肢への期待