ミトコンドリアロイシンtRNAが障害される難病
川崎医科大学は2月19日、大正製薬株式会社と協力して行ったタウリン散98%「大正」の「MELASにおける脳卒中様発作の抑制」の効能・効果および用法・用量追加に係る製造販売承認事項一部変更承認申請について、2019年1月31日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において承認が了承されたと発表した。
画像はリリースより
ミトコンドリア病MELAS(ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群)は、ミオパチー(M)、脳症(E)、乳酸アシドーシス(LA)、および脳卒中様発作(S)を特徴する疾患で、脳卒中様発作の発症から平均16.9年で死亡する難病。MEALSの原因は、90%以上がミトコンドリアのロイシンtRNA遺伝子領域の点変異であり、この変異によってロイシンtRNAのアンチコドンに正常では存在するタウリン修飾が欠損するため、mRNAのコドン認識が障害されることが、これまでの日本人による研究で明らかとなっている。タウリンは体重の0.1%を占めるアミノ酸だが、ヒトではその生合成系が貧弱で、通常、食事から直接摂取する必要がある。
MELASに対して保険適用された日本初の治療薬に
川崎医科大学神経内科学講座の砂田芳秀教授および大澤裕講師は、同自然科学の西松伸一郎准教授、帝京科学大学理学療法学科の萩原宏毅教授らと協力し、タウリン大量療法の医師主導治験を実施している。同治験の成果としてこれまでに、MELASの脳卒中様発作の再発抑制効果を証明し、基本病態であるミトコンドリアロイシンtRNAのタウリン修飾率が増加することを発表した。
この成果をもとに、「タウリンによるMELAS脳卒中様発作再発抑制療法の実用化」を研究課題とし、厚生労働省および日本医療研究開発機構の支援のもと、砂田教授らによる医師主導治験を進めた。この治験結果に基づき、日本神経学会から要望書が厚生労働省に提出された。2017年8月「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の検討結果を受け、厚生労働省は大正製薬に、既存薬タウリン散(1987年:うっ血性心不全・高ビリルビン血症(閉塞性黄疸を除く)における肝機能の改善)の稀少難病MELASにおける脳卒中様発作の再発抑制を効能・効果とする開発要請を行った。そして2018年4月16日、「MELASにおける脳卒中様発作の抑制」の効能・効果および用法・用量追加に係る一部変更承認申請が行われ、2019年1月31日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において承認が了承された。
これまでミトコンドリア病MELASに対する保険適用されている薬剤はなく、タウリンは日本で初めて、難病であるミトコンドリア病に対する保険適用された治療薬となる予定だ。なお同剤は、希少疾病用医薬品の指定を受けている。
▼関連リンク
・川崎医科大学 ニュースリリース