FGF23に対する完全ヒトモノクローナル抗体
協和発酵キリン株式会社および同社の欧州子会社である英Kyowa Kirin International PLCと、米ウルトラジェニクス・ファーマシューティカルは2月15日、小児X染色体連鎖性低リン血症(XLH)を対象としたブロスマブ(欧米製品名:「Crysvita(R)」)の第3相臨床試験について、投与64週時点において、有効性および安全性のいずれにおいても良好な結果が得られたことを発表した。
XLHは、遺伝的な原因により血中の「線維芽細胞増殖因子23(FGF23)」が過剰となることで、体内のリンが尿中に過剰に排泄され低リン血症となり、その結果として骨の成長・維持に障害をきたす希少疾患。XLHは幼児から発症し、成人までその影響がみられる。小児のXLH患者では、骨疾患を引き起こし、下肢の変形や低身長が多くみられる。成人のXLH患者では骨折のリスクが高くなる。
ブロスマブは協和発酵キリンにより創製されたFGF23に対する完全ヒトモノクローナル抗 体。FGF23は、腎臓におけるリン排泄と活性型ビタミンD産生を制御することで、血清リンおよび活性型ビタミンD濃度を低下させる液性因子である。同剤は1歳以上の小児および成人におけるXLHの治療薬として、アメリカ食品医薬品局(FDA)およびカナダ保健省(Health Canada)から医薬品販売承認を取得。また、X線画像診断で骨疾患所見を有し、成長期にある1歳以上の小児および青少年におけるXLHの治療薬として、欧州委員会(European Commission)から条件付き医薬品販売承認を取得している。
くる病重症度など主な項目全てにおいて既存治療群より改善
今回の試験は、米国、欧州、カナダ、オーストラリア、日本および韓国において登録された1歳から12歳までの小児XLH患者61名を対象として実施されている、第3相無作為化オープンラベル試験。64週間の投与によるブロスマブ群(29名)と既存治療群(リンおよび活性型ビタミンD経口投与、32名)との間での有効性および安全性を比較している。全ての被験者は試験参加前に、平均して約4年間にわたり既存治療を受けていた。ブロスマブ群の被験者は初期用量0.8 mg/kgで 2 週間に1回の皮下投与を受け、そのうち8名は試験期間中に1.2 mg/kgまで用量を漸増した。既存治療群の被験者は専門的なガイダンス資料に基づき、各担当医により最適化された各国における標準的な治療を受けた。
64週間投与の結果、ブロスマブ群は有効性に関する主な項目の全てにおいて、既存治療群に対して有意な改善を示した。具体的には、くる病重症度や下肢の変形、成長速度の大きな改善、および歩行距離増加で示された身体機能の改善などが認められた。安全性については、同試験の40週時点での結果、およびその他の小児XLHを対象とした試験で得られた結果と同様だったという。64週間時点で投薬の中止は認められず試験期間を通じて死亡例の報告はなかった。
今回の第3相臨床試験結果のデータは、欧州で検証試験として提出。また、ウルトラジェニクス・ファーマシューティカルはXLHを適応として、ブラジルおよびコロンビアに承認申請を行った。
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・協和発酵キリン株式会社 ニュースリリース