厚生労働省は15日、KMバイオロジクスが製造販売する「乾燥ボツリヌスウマ抗毒素」について、E型抗毒素の含有量が承認規格を下回るロットが2件投与されていたことを公表した。ボツリヌス抗毒素は、国が一括購入して備蓄し、都道府県からの要請を受けて有料で提供しているが、安全性に問題はなく、いずれも有害事象は確認されていないことから、行政処分などは予定していない。今回の事案を受け、KMバイオは「多大なる心配と迷惑をかけたことをお詫びする。この経験を今後の製造に生かし、安定した品質の製品を届けられるよう努める」と謝罪のコメントを発表した。
KMバイオによると、安定性評価の力価試験でE型抗毒素の含有量が承認規格を下回ったボツリヌス抗毒素は、E型「製造番号E01」と多価「製造番号001」の2品目。2017年6月から4回、含有量が承認規格を下回ったことを厚労省に報告した。E型1件、多価1件の投与が確認されているが、いずれも有害事象は確認されておらず、今年1月までに承認規格を満たした新ロットに交換している。厚労省は、新ロットを都道府県に提供する。
ボツリヌス抗毒素は、土壌や水に存在するボツリヌス菌が作る毒素によって全身に神経麻痺が生じるボツリヌス症の治療に使用し、13年から5年間で国内13件の発症が報告されている。抗毒素にはE型と多価の2種類があり、いずれも使用量が少ないことから、国が一括購入して備蓄し、都道府県からの要請に応じて有料で提供している。
国内では、02年以降に化学及血清療法研究所(化血研)が製造販売していたが、昨年7月以降は事業継承したKMバイオが製造販売している。
今回の事案を受け、厚労省は規格を下回ったロットについて「安全性に問題はない」と判断し、行政処分しない考えだが、「国有ワクチンの供給を行う企業に必要な指導の実施を含めて安定供給に努めたい」としている。
KMバイオは「多大なる心配と迷惑をかけたことを深くお詫びする。今回の経験を今後の製造に生かし、安定した品質の製品を届けられるよう努める」とのコメントを同日付で発表した。