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電カル情報、多施設で集積-阪大病院など19施設、製販後調査や創薬に活用可

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2019年02月20日 AM10:30


■広範データを低コスト収集

大阪大学病院は近く、関連病院を含めた計19施設の電子カルテデータから、前向き臨床研究に必要な症例情報を幅広く、効率的に収集するネットワークを本格的に稼働させる。医師らが電子カルテで診療内容を記録すると、同時に研究用の症例報告書(CRF)を作成できる仕組みを各病院に導入。CRFや各種画像、サンプル分析結果を匿名化して阪大病院のサーバーに自動的に集積し、解析できるシステムを構築した。今後は製薬企業にも幅広く活用してもらいたい考え。医療用医薬品の製造販売後調査や、臨床研究を通じて形作った各疾患の患者レジストリデータに基づく創薬研究など、様々な利用を見込んでいる。

組織の名称は「」()。現在は阪大病院のほか、、大阪府立急性期総合医療センター、大阪労災病院など15施設が参加。来月までに関西労災病院など4施設が新たに加わり、計19施設のネットワークになる予定だ。

既に阪大病院は、院内で臨床研究に必要な情報を効率良く収集する体制を整備。これを多施設に拡大することで、より多くの患者データ収集が可能になる。(AMED)のプロジェクトでネットワークの基盤整備に取り組んできた。

多施設での効率的な症例情報収集を実現するため、各病院の電子カルテにテンプレート機能を導入した。研究対象患者の診療時に医師らが、通常は自由な書式で記述する経過記録などの内容を、テンプレート上のチェックボックスを選択して入力する機能だ。テンプレートで入力した内容は、文書化された診療記録として電子カルテ上で表示されると同時に、そのデータを反映して研究用のCRFが自動的に作成される。

電子カルテには、処方や注射データなど構造化され解析可能なデータが含まれる一方、経過記録や退院時サマリなど自由な書式で記載され、そのままでは解析しづらい非構造化データも存在する。テンプレートの活用により、これら非構造化データも解析可能な形で保存できるようになる。

処方や病名など既に構造化されているデータもCRFに自動的に取り込める。医師やCRCによる電子カルテ情報の転記作業を削減できる。

各病院で効率的に作成されたCRFは安全な回線を通じて阪大病院のサーバーに集積し、解析する。合わせて各病院の画像データを自動的に取得し、匿名化してサーバーに送信する仕組みも構築。さらに、血液や組織など各病院で採取したサンプルに被験者番号と紐づくIDを発行し、分析結果を管理する機能も設けた。

構築したネットワークは、各病院の電子カルテデータを網羅的に集積するMID-NETなどとは目的や特徴が異なる。集めたデータを後ろ向きに解析することも可能だが、目的を設定し前向きな臨床研究を行えることが最大の特徴。目的に応じて、電子カルテの非構造化データや画像データなどを幅広く、多施設から低コストで収集できるのが強みだ。

数年前から数施設で取り組みを開始。AMEDの研究費をもとに近年、参加施設を拡大した。多施設で拡張機能障害型心不全患者の症例情報を集積する研究を稼働させつつ、問題の改善を繰り返してネットワーク基盤を整備。このほど本格的な稼働にこぎつけた。

今後、製薬企業にもネットワークを幅広く活用してもらいたい考えだ。対象の一つが製造販売後調査。製薬企業から依頼を受け、症例情報を前向きに集める。阪大病院医療情報部の松村泰志部長(大阪大学大学院医学研究科教授)は、「テンプレートを活用し、各病院で重大な副作用を記載してもらえれば、その情報を集められる。他の関連データは自動的に収集すれば、今までと遜色ないか、より精度が高い調査を行えるのではないか」と語る。

もう一つは、臨床研究を通じて形作った患者レジストリデータの活用だ。各疾患の症例情報を網羅的に集積したレジストリの解析によって得られる疾患の病態や経過、各治療の奏効率などの様々な知見は、創薬研究にも役立てられる。先行して数百例のデータを集積した拡張機能障害型心不全に加え、近く乳癌のレジストリ構築が始まる予定だ。

製薬企業が簡便に利用できるように学内の規定も変更。共同研究の枠組みだけではない新たな契約のあり方を設定した。患者にも匿名化データの企業利用の同意を得るという。

 

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