微生物の溶液をポンプで流すだけで簡単に破砕
名古屋大学は2月14日、微生物の溶液をポンプで流すことにより簡単に破砕し、種類を特定する技術を新たに発見したと発表した。この研究は、同大大学院工学研究科の馬場嘉信教授、安井隆雄准教授らと、九州大学先導物質化学研究所の柳田剛教授、大阪大学産業科学研究所の川合知二特任教授との共同研究によるもの。研究成果は、米化学会雑誌「ACS Nano」オンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
微生物は細胞壁を持っているため、動物細胞に比べて外部からの刺激に対する抵抗力が大きいことが知られている。微生物内部のDNAを調べることで微生物の種類の特定は可能であるが、効率的かつ簡単に微生物を破砕する技術がないため、微生物の特定には、専門家が特殊な薬剤を用いる必要がある。そのため、効率的かつ簡単に微生物を破砕し、微生物内部のDNAを調べる手法が求められていた。
感染症予防にも期待
今回研究グループは、ナノスケールの棒(ナノワイヤ)の特性を生かした微生物破砕法を新たに開発。微生物が分散した溶液をポンプで流すことにより、効率的かつ簡単に微生物を破砕することを可能にした。実際に、同技術を用いることで、大腸菌や枯草菌と比べて破砕が困難とされていた酵母も簡単に破砕することができたという。
また、ナノワイヤで破砕した微生物のDNAを増幅することが可能なデバイスと組み合わせることで、目視による色の変化で微生物を特定できる技術も開発。この技術を用いることで、微生物が含まれる溶液を採取し、検査薬を混ぜた後にポンプにセットしてスイッチを入れるだけで、O-157のような菌の有無を、家庭等でも検査することが可能になると考えられる。
研究グループは、「今後、本技術を活用することによって、危険な微生物の水際での簡易検出が可能になると考えられる。この可能性は、本技術を用いた微生物の特定法、さらには、微生物由来の感染症の予防にも繋がると期待される」と、述べている。
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・名古屋大学 プレスリリース