致死性不整脈イベントの発症に影響を与える要因は?
国立循環器病研究センター(国循)は2月14日、日本おける先天性QT延長症候群の突然死や致死性不整脈イベント発生に、原因遺伝子の種類だけでなく、個々の患者の変異部位や年齢、性別が深く関係することを世界で初めて報告したと発表した。この研究は、日本医科大学の清水渉大学院教授、国循センターの相庭武司特任部長らの多施設共同研究グループによるもの。研究成果は「JAMA Cardiology」のオンライン版に2月13日付で掲載された。
画像はリリースより
先天性QT延長症候群は、心電図でQT時間の延長という特徴的な波形を示す疾患。運動中や強いストレスなどで致死性不整脈である心室頻拍・心室細動を発症し突然死の原因となる。75%の患者で、心筋イオンチャネルに関連する遺伝子の異常を認め、そのほとんどがLQT1型、LQT2型、LQT3型のいずれの遺伝子型である。しかし、日本人の先天性QT延長症候群症例において、遺伝子型や年齢・性別が将来の致死性不整脈イベントの発症にどのような影響を与えるかは十分には検討されていなかった。
遺伝子型だけでなく年齢や性別を考慮することも重要
今回の研究は、日本国内の11施設において1,124例の先天性QT延長症候群患者(LQT1型521例、LQT2型487例、LQT3型116例)を対象に、遺伝子型および年齢・性別により致死性不整脈の発症に差異がみられるか後向きに長期追跡調査したもの。調査の結果、まず遺伝子型別では、総イベント発生率はLQT1、2型に比べLQT3型で少ないが、致死性イベント(心室細動・心停止・突然死)の発生率には遺伝子型による差は認めず、総イベントに対する致死性イベントの占める割合はむしろLQT3型で高かった。
15歳未満では、各遺伝子型とも心イベント率に性差はなかったが、15歳以上ではLQT1型とLQT2型で女性が男性より心イベント率が高かった。また、LQT1型の男性では変異部位による心イベント発生率に違いがないが、女性では膜貫通領域が他の部位の変異よりも心イベント発生が高かった。さらに、LQT2型とLQT3型では、性別に関係なくポア(S5-pore-S6)領域の変異の心イベント発生率が他の変異に比べに高かったが、LQT2型の女性では非ポア領域でも高い心イベント発生率を認めたという。
今回の研究により、日本人の先天性QT延長症候群において致死性不整脈イベントを予測するために、遺伝子診断によるLQT1型、LQT2型、LQT3型の遺伝子型だけでなく、年齢や性別を考慮することの重要性が明らかとなった。今回の研究は、日本人の先天性QT延長症候群において、社会的損失が大きい若年から青壮年の突然死を予防するICDを植え込むべき症例を検討する際の有用なエビデンスを示した、と研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース