厚労省は、臨床研究・治験の推進に関する国の基本的な考え方として、▽新薬・新医療機器等の開発と治療の最適化のための研究のバランス▽人的・財政的リソースの効率化▽リアルワールドデータの利活用促進▽小児疾病・難病等の研究開発が進みにくい疾病領域の取り組み▽国民・患者の理解や参画促進――の項目を論点に提示。
その中で、人的・財政的リソースの効率化に向け、臨床研究中核病院の役割を整理し、支援を受ける医療機関と相互連携を円滑化させるほか、CRCや生物統計家の処遇について実態を把握する方向性を提示。さらに、アカデミアで臨床研究・治験を推進していくためには、民間資金の活用を一層促す取り組みを行うことが必要と指摘。新薬開発における国と製薬企業の役割分担を整理し、国が支援すべき領域を重点化することを提言した。
具体的には、採算性が見込めない臨床POCなどのエビデンスが不十分な薬剤の医師主導治験、製剤化に課題のある製剤開発研究、開発コストが不透明で製薬企業が単独で開発することが難しかったり、患者数が少なく市場性が低い薬剤の医師主導治験を列挙し、これらに国費を投じて支援を行い、製薬企業に導出して開発を引き継ぐ役割分担が想定されている。
清水章委員(京都大学病院臨床研究総合センター副センター長)は、臨床研究中核病院の置かれた厳しい状況を訴えつつ、「今あるリソースを効率化してほしいと読める。もう少し臨床研究中核病院の機能をどこまで求めるのか、そのための支援基盤をどこまで整備するのかを明確にしてほしい。その上での効率化という議論をお願いしたい」と注文をつけた。
アカデミアで民間資金を一層活用していく取り組みについては、楠岡英雄座長(国立病院機構理事長)が「民間資金を活用せざるを得ない」と言及。また、藤原康弘委員(国立がん研究センター中央病院副院長)は、海外のメガファーマが国内で治験を実施するケースは少ないとして、「保険外併用療養費制度のフレキシブルなあり方を考えるべき」と提言した。
一方で、清水委員は「採算性のある、なしというステレオタイプな役割分担を区分けするのはいかがなものか。アカデミアも企業も必ずしも採算性だけで新薬開発を行っているわけではない」と苦言を呈した。